3話 奪われた道筋
ステータスを見て、真っ先に俺が思ったのはスキルやポイントについてだった。
『取得可能スキル』と『能力振り分けポイント』、それに加え、『使用可能スキルポイント』だ。
「どうすればこれ使えるんだ?」
ポイントの使い方がわからなかった俺は、とりあえず適当にディスプレイをタッチした。すると、画面が変わり、俺の望む文字が現れた。
『スキル【鑑定】を入手しますか?
入手にはスキルポイント100が必要です。
「yes」 「no」』
俺は迷わず「yes」を選んだ。
まず第一に、このゲームの世界でクリアするまで暮らすと考えると鑑定は必須だろう。ならば、早いうちから取った方がいい。
「まずは試しになに見ようかなー」
適当にキョロキョロして、結局俺は自分の立っている位置に生えている草を鑑定して見ることにした。
「鑑定中。鑑定完了。鑑定結果、オープンします。
『草』『草』『草』『虫』『草』『虫』『虫』『虫』
『草』『草』『草』『草』『虫』」
俺は頭が割れそうだった。まさか、自分の真下を鑑定しただけで、ここまで膨大な数の結果が勢いよく来るとは思わなかったからだ。
このまま続けたら、頭が割れてしまう。俺はひとまず鑑定を使うのをやめた。
『鑑定レベルが2になりました』
俺が鑑定をやめようとしたとき、よくわからないがレベルが上がった。これはこれで嬉しいが、少しの間鑑定は使わないことにした。
「んじゃ、とりあえずここから離れるかな」
ほとんどの人が既に起き上がり、各自でステータスを見たり、仲間内で集まったりで、パーティーが出来ていた。
もちろん、俺は一人だ。誰かと組むつもりもない。
そして、俺は皆が集団催眠やら、ふざけたことを言っているうちに歩き出した。
「うーん。地図とかねえかなぁ」
『地図検索。検索完了。地図を入手するには、1000マニーまたは、30スキルポイントが必要です』
どうやら、俺の言った言葉がこのゲーム内にあれば検索してくれるらしい。そして、地図は金でも買える。
とりあえず、俺は金よりも地図が欲しかったため、即座に買うことを決めた。
俺が地図を購入したとき、手元にあった金は消え、代わりに俺の手の平に丸まった紙が現れた。
「んー。お、この近くに街あるじゃん───いや待てよ? この街には皆きっと行くはず。ってことは、俺は違う所に行って狩りをした方が……」
ブツブツ呟きながらルートを確認した。
結果、俺は街に行かず、街とは反対側の森に行くことにした。野宿なら多少出来るだろうし、レベルも上げたい。どうせ、日本でも引きこもりだった俺にとって死はあまり怖くない。彼女も居ないしな。
「あ、でも。妹がなぁ……」
唯一無二の俺の妹だけが心配だった。俺が死んだら多分、妹は泣くだろう。あいつを泣かせることだけはもうしたくない。初めて引きこもった時、あいつが泣いたから俺は誓ったんだ。妹をもう泣かせないって。
「やっぱり街に行く──」
「ねぇそこの君。何してんの? あれ? それ地図じゃん!俺にくれよ!」
俺が一人で考え事をしているうちに、見知らぬ顔の恐い男達に囲まれていた。
どうやら、俺の持ってる地図が目当てのようだ。
「さっさと寄越せって言ってんのが聞こえないのか? あぁん!!」
一人のリーダー格のような男が俺に近づき、強引に地図を奪い取った。
「さっさと渡せば良いんだよ。お前ら、行くぞ」
地図だけを奪い取り、俺の前から去っていく男達。
まだ俺は森の位置しか把握していない。しかも、金もないことから地図も購入出来ないし、選択肢は一つしかなかった。
「森……行くか」
地図を見て覚えた森の位置に俺は歩き出した。
まだ剣もろくに使えない俺は果たして森に辿り着く事が出来るのだろうか。