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URLから始まるデスゲーム!  作者: ねぎとろ
2章 願っていたもう一度

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21話 時には逃げることも大事

 街を出て、エデンの塔に向かっている俺たち。

 直線距離だと、案外近いが、さすがに障害物がないわけがないので、正直直線距離は関係ない。

 森があり、山を登り、下って進んだところにエデンの塔があるのだ。

 今現在、俺とシズクは森の中をさまよっている。

 ジャイアントワームをヒマワリと戦った時よりも、広く、太陽の光すらもあまり入らない森だ。昼間なのに薄暗く、少し怖さも感じてしまう。


「なぁ、なんか薄気味悪くねえか?」


「そうかしら? 私的には全然普通だけど……もしかして、怖い?」


「怖くねえし! いや、まじで、今昼間だからね? 夜ならまだしも、昼とか怖くねえから。ちょっと、不気味だな〜程度だから!」


「いやいや、冗談だから。そんな全力で言わなくても──」


「シズク。少し黙れ。モンスターが近くにいる」


 シズクとの会話中に、何処からか茂みを歩いているような音が聞こえてきた。

 この森の中は静寂に包まれており、音は透き通って聴こえやすい。

 もしかしたら、俺の声が大きかったからモンスターに聴かれてしまったのかもしれない。


「ねぇ、あそこから誰かが走ってくるわ」


 シズクが指を指した方向には、茂みを全力で走る人影が見えた。それも、こっちの方に向かってだ。

 多分だが、さっき聞こえた音は全てこの音だったんだろう。

 だが、なぜこの人がそんなに全力で走っているのかが気になる。


「誰かー!!!誰か助けて〜!!」


 走りながら助けを求める人は遂に俺達のすぐ近くまで来ていた。

 そして、なぜその人が逃げていたのか、俺とシズクは知ってしまった。

 逃げている人を追うかのように、人と馬が組み合わさったようなモンスターが弓を構えている。


「エンマ。どうすんの? ここに居たら、あの子を助けないといけない訳だけど……」


「はぁ。ま、どうせレベル上げはするんだし、助けてやるかぁ」


 そろそろ逃げている人がこちらの方に来る。もうあと数秒走れば辿り着くだろう。


「はぁはぁ。すいません、お願いします! あのモンスターから助けてください……ほんと、死にたくないんです……まだ、お礼はしますから」


 逃げている人は、少年だった。まだ10歳ぐらいの子供だ。そんな子供が俺たちを見つけた瞬間、立ち止まり、息切れしながら必死に頼み込んでいる。


「あぁ。任せとけ。お礼はいらねえ。モンスターのドロップ素材だけ貰っとくからな」


「エンマ。私と勝負しましょ? どっちがより多くのダメージを与えてレアアイテムを入手するかを」


「いいぜ、俺が勝つからな」


「お兄さんお姉さんありがとうございます……!!」


 俺達の会話が終わった時、勢いよく茂みからモンスターは飛び出してきた。

 その瞬間を見逃さず、俺は鑑定をする。


『サジタリウス』


 レベル:37

 HP:653

 スタミナ:205

 STR:142


 スキル:【急所射ち】【さみだれ射ち】【扇射ち】【???】


 どうやら、こいつは俺たちよりもレベルは高いようだった。HPも多く、スキルも遠距離系ばかりだろう。


「シズク、こいつのスキルは遠距離系だ。俺が近距離で攻める。お前は俺に向かって打ってくるだろう矢を撃ち落としてくれ」


「いいわよ。そのままあのモンスターも一緒に倒してあげるわ」


 正直、一つだけ見えなかったスキルが気になるが、これも遠距離系だろう。それならば、近距離で戦える俺に勝ち目はある。


『さみだれ射ち』


 最初に先制を仕掛けてきたのはサジタリウスだった。上半身が人間なことを利用して、スキルを言葉に出して放ってきたのだ。


「くっ。矢の量が多いな……」


 今にも飛んでくる矢は、さみだれという程もあって、俺1人に対しても数十は飛んできている。

 シズクにも飛んでいることから、軽く100本ほどを一気にスキルで放った事となる。

 これは、さすがに俺の感知ガードでも防ぎきれない。


「任せてちょうだい。雷魔法Lv.7【チェインライトニング!】」


 シズクが放った雷は、俺たちに矢が当たるよりも早く一本の矢に直撃し、連鎖するように全ての矢を撃ち落とした。

 サジタリウスは予期せぬ行動に戸惑ったのか、追撃の矢も放たずに弓を構えているだけだった。


「スキル発動!『サウザントスラッシュ!』」


 弓を構えているだけの敵は格好の獲物だ。

 既に相手が俺のスキルに対して気づいたときには、俺は斬りかかれる態勢になっていた。

 つまり、サジタリウスはもう俺のスキルを受けなければいけない状況になってしまったのだ。


「『鋼鉄化』」


 俺のスキルは確かに、サジタリウスに直撃した。

 だが、幾度となく繰り出された俺の斬撃はまるで鉄を斬りつけているような弾かれるような音を出していた。

 スキルが終わり、息切れしている俺の前にはまるで傷一つないかのような姿で立っているモンスターがいた。

 先程までとは一切違う姿。全身に鎧兜を被り、馬の体も鉄のような色に変化していた。


「まさか、固有スキルが防がれるなんて……」


 俺のスキルの威力が弱かったのか、それともサジタリウスの見えなかった最後のスキルが強かったのかは分からないが、この状況的に明らかに俺達の不利だった。

 俺のスキルでダメージを与えれたのは僅かな切り傷のみ。


「エンマ! どうするの!!」


 少し離れた位置からシズクが俺に問い掛ける。

 どうするの? と、言われても俺の中で選択肢は一つしかなかった。

 俺の今出せる精一杯のスキルも通じない相手。

 そんなの決まってるじゃないか。


「シズク! その少年連れて逃げるぞ!!」


 俺はシズクの方に走りながら叫んだ。

 幸いにも、相手は鎧のせいなのか、走るの自体は遅かった。重量の問題だろう。


 今も尚震えている少年を俺は仕方なく肩に担ぎ、とりあえずシズクと共にサジタリウスから逃げる事にした。

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