13話 決闘の結末
決闘始まった瞬間だった。
ウィッチは俺に対して杖を構え、早速詠唱を始めた。
「やべぇ……詠唱があるってことはもしかして……」
今現在、俺が使える魔法はほとんど詠唱なんてものはない。だが、高位の魔法になると詠唱が必要になると噂で聞いたことがある。その噂が本当ならば今俺が決闘している相手は相当な魔法の使い手、さらには俺より遥かにレベルが高い可能性もある。
「……よし。もうこの手段しかないな」
相手が魔法を詠唱しているならば俺はそれに近づいて止める。その手段しかなかった。
そして、俺は走り出した。
「鑑定発動」
走りながらボソッと呟く。こいつの事をどれだけ見れるか分からないが、少しでも情報が見れれば勝てる可能性は出てくるかもしれない。
『鑑定中。鑑定完了。鑑定結果オープン。
名前:???
レベル:30
ステータス:解析不能
スキル:【雷魔法Lv.8】【不明】【不明】』
本当に少しの情報だった。レベルと一つのスキルだけ。でも、これさえ分かれば俺には充分だった。
「うっし。俺のがレベルは高いな」
レベルを見て少し安心し、俺は突撃する。雷魔法Lv.8は確かに高威力の詠唱が必要な魔法が撃てるかもしれない。だが、俺よりレベルが低いということは、感知ガードで少しは防げるし、走って動く的にこいつが上手く当てれるとは思えない。まぁ、さっきの歩いてる俺に雷を当てれなかったほどだしな。
「狂い踊れ!雷魔法Lv.8【ライトニングブラスト!!】」
俺が走ってる途中で敵の魔法は発動してしまった。
相手の声が辺りに響き、それに応じて晴天だった空は雷雲に包まれていく。
「くっそ。これやべえかも……」
内心焦りつつも俺は走るのをやめない。
辺りに雷の音が鳴り響き、俺の周りに見事に落ちていく。
「やっぱり当たんないみたいだな!」
「それはどうかな?」
俺の声が既に聞こえている範囲にいたのか、俺の声に返答があった。
「雷魔法Lv.5【ライトニング!】」
ライトニングブラストは多分俺を真っ直ぐ走らせるために使ったのだろう。
そして今、相手は俺に杖を構え、杖先に雷を溜めている。そして、それを止める術は俺にない。
「くっそ。俺の負けか……」
負けを確信した時、俺の肩をなにかが貫いた。
いや、正確には貫いた正体はわかる。さっき相手が唱えた魔法、ライトニングだ。杖先から俺に対して真っ直ぐ直線に撃ってきたのだ。それが今、狙いを外し俺の肩に直撃した。
「……まだ、いける……!」
幸いにも肩を撃ち抜かれたくらいじゃ体力は半分まで到達していない。ってことは、まだ決闘は続くという事だ。
「お返しだ!氷魔法Lv.2【アイスアロー!】」
俺は一本の氷の矢を出現させ、相手に放つ。
「こんなもの効くか!」
杖を振るい、相手は俺の氷の矢をへし折る。
だが、それは俺の計画通りだった。氷の矢によって注意を逸らし、雷の音によって俺の足音は消えている。
「……降参するわ……私の負けよ」
俺は相手の顔先に剣先を突きつけ相手との勝負を決めた。
一歩間違えれば俺は負けてただろう。相手の命中率が高ければ負けてたし、ライトニングブラストを俺に向けて撃たれたら躱すことが出来ずに直撃して威力によっては瞬殺かもしれない。
「お前、強いな」
なにも考えずに俺の口からは相手に向けて言葉が放たれていた。
「まぁ、魔法の威力はね。でも、私は上手く当てることが出来ない。今回の敗因も自分で分かってるわ」
「そうか。決闘楽しかったぞ。またいつか戦えることを楽しみにしてるよ」
俺の素直な言葉だった。本当にこいつの決闘は楽しい。一歩間違えれば負ける勝負。そして、お互いに考えながら戦う。決闘じゃなければ二度と戦いたくないが、絶対に死なない決闘ならもう一度戦いと俺は素直に思ってしまっていた。
「そうね。今度は絶対負けないわよ。それで、もう一度戦うなら、そうね、フレンド登録とかしてあげてもいいわよ……」
何故かこいつは赤面しながら俺にフレンド登録を申し込んできている。が、もちろん俺の返答は一つだ。
「すまん。フレンド登録は無理だ。俺の初めてのフレンドはもう決めてるんだよ。またいつかお前とは会える気がするから、フレンドになんなくても大丈夫だろ!」
俺の言葉はどうやら地雷を踏んでいたらしい。
俺の目の前に立っている女は今現在、周りに雷を纏いながら俺に怒っているのだから。
「ちょ、待てって、なぜ怒るんだ!?」
「うるさい!! こっちが勇気出してフレンドになってやろうとしてんのに断るからだよ!!」
「そんな事で怒るなバカ!」
「ちょ、逃げるな!! あんた!次会ったら覚えときなさいよ!ちなみに、 私の名前は『マーリン』だからね!! 忘れてたら殺すから!!」
俺が全力疾走してる時に後ろから大声で名前を言われた。きっと、俺がこいつの名前を忘れることはない。なんとなくだけどそんな気がした。
「じゃあなマーリン! また会おうな!」
「名前で呼ぶなアホ!!!!!」
「……全く意味わかんねえなぁ……」
そして俺はマーリンから逃げるようにまた海岸を走った。どこに行けば良いかなんて分からないまま走っていた。
その後、もちろん俺は自分でも予想していた通り、迷子になったのだった。