最終話 もう一度URLで!
遂に俺の目の前へと堕天使たちが辿り着いた。
今の俺は虚ろな目をしてただ死ぬのを待っている人だろう。
仲間もいない。助けてくれる人もいない。
『それじゃ、バイバイ』
俺の頭へと蹴りが飛んできそうになった瞬間、堕天使は吹き飛んだ。
どうして吹き飛んだのかは分からないが、少しでも死が遠ざかったのだ。
だったら逃げなければ。今死ねば妹に会えない。
妹を一人にしてしまう。
「エンマ。もう大丈夫だよ」
俺の体へと誰かが触れ、俺の体はみるみるうちに回復していく。
「……誰……だ?」
「ごめんね。でも、もう裏切らないから。もう大丈夫だから」
俺の前に居たのは、天使にされたはずのヒマワリだった。
何処から来たのだろう。
「今は休んでていいよ」
ヒマワリから放たれた言葉で俺は眠くなってしまった。
これも魔法なのだろうか。
それでも、ヒマワリに会えてよかった。
眠らされてどうなるかは分からないけど、最後の瞬間にヒマワリに会えたなら……俺は……
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次の日かも分からず、俺の目は覚めた。
だが、周りには誰もいない。
ずっと前に見たことのある天井を見つめ、俺は少しの間考える。
「ここ、明らかに俺の家だよなぁ……」
一人ボソッと呟くが、帰ってくる声は当然ない。
少し体が重いが、俺は自身の体を持ち上げてベットから下りる。
ベットに腰掛け、今までの事を振り返ってみた。
やはり、最後の瞬間が俺の記憶に残っているが、どうしても思い出しづらい。
最後に会った人が誰なのか、とても大切で、会いたかった人ということしか分からない。
「どっかに情報は……」
今の時代、情報を得るにはネットを使うのが早かった。
それは俺も同じだ。
もしかしたら、あのデスゲームの出来事がネットの中で話題になってるかもしれない。
「そんなことはねえか……」
どんなにニュースを見ても一切デスゲームのことはなかった。
まるで、俺だけがずっと眠っていたかのように現実の世界は淡々と進んでいた。
なにも得ることはないと思い、パソコンをシャットダウンしようとした瞬間だった。
俺宛にメールが届いた。
「なんでこのタイミング……?」
少し不安になったが、俺はメールを開いた。
そこには、一つのURLと、文章が綴られていた。
文章には、デスゲームの世界は救われたということ。
堕天使は消え、新しくデスゲームの世界はルイスとルシフェル、ヒマワリと天使で管理する事。
それに加え、俺の堕天使の力は天使たちの力を借りて消したということまで書いてある。
そして、最後に、別れを言わずに現実へ戻してしまって済まないと書いてある。
「そっか。でも、あの世界は救われたか……」
自分が最後の瞬間に立ち会えなかったことはショックだが、それでもみんなが救われたならそれでいい。
あとは、現実に戻ってきているシズクの行方だ。
シズクが会いたいかは分からないが、少なくとも俺は会いたかった。
「このURLはなんだろうか」
URLをクリックしようとしたその時だった、俺の部屋をノックする音が聞こえた。
そして、ノックが止み、扉は開かれた。
部屋へと入ってくる二つの足音。
一人は妹だろう。あと一人は一体誰なんだ……?
「……うそ……生きてるの?」
何度も聞いた声だ。
どうして俺の家を知ってるのかは分からない。
でも、俺は現実に戻ったその日に会えてよかったと思っている。
「あぁ。ただいま。雫 恵美。遅くなってごめんな」
振り返り、俺は二人へと挨拶する。
とてもじゃないが、二人とも、いや、三人とも見れた顔じゃなかった。
涙でぐしゃぐしゃだ。
少しの間みんなで泣き、ようやくシズクと妹は泣き止んだ。そして、
「「……おかえり。お兄ちゃん(エンマ)!」」
訳も分からないままURLを踏み、デスゲームへと参加させられた。
でも、俺はそこで仲間の大切さ、妹の大切さが分かった。
だから、デスゲーム自体、もしかしたら悪いものではないのかもしれない。
確かに、ヒマワリとルシフェル、ルイスにももう会えないけど、俺は現実に戻れてよかったと思っている。
「あ、そうだ。なぁ、このURLってなんだと思う?」
俺はシズクへとメールの文面と一緒にURLを見せた。
どうやら、シズクもデスゲームのことは覚えていて、このメールを見てまた泣きそうになっていた。
俺はシズクが泣き止むのを待ち、URLについて話すことにした。
「…………私の憶測でしかないけど、多分このURLね……デスゲームの世界に行けると思う。もしかしたら、あっちの世界に残りたいと思った人に送られてるのかもしれないし、エンマだけかもしれない」
「そっか……どうする? 戻ってこれないかもしれないけど……」
「そうだよね。でも、私はもう一度みんなと会いたいな」
「私もお兄ちゃんと仲良くしてくれた人に会ってみたい!」
「いいのか? せっかく現実に戻れたのに……」
「「大丈夫!」」
俺は二人の言葉を聞き、カーソルをURLへと移動させた。
そして、三人でマウスに手を乗せ、URLをクリックする。
その瞬間、その場にいた俺たちは居なくなり、現実に残された俺の部屋は風でカーテンが揺れ、静寂だけが残ったのだった。
綺麗に絞めれてないかもですが、完結です。
なんかモヤモヤした方などいたらごめんなさい。
どうしても完結が難しかった……(伏線ばらまきすぎて)
新作の異世界転移のお話も読んでいただければ幸いですm(*_ _)m




