106話 天使の力
モンスターは爆散し、辺りに飛び交っていた雷は突然止んだ。
そして、エフェクトなって消えてしまったモンスターの代わりに、ルシフェルにはモンスターを倒したことによる経験値やアイテムが渡されていた。
「エンマ……アイテム……要る?」
そうか。ルシフェルにとってはこの程度のアイテムはもちろん要らないのだ。
いや、もはやこの世界が消える今、俺たちにアイテムなんて必要ないのかもしれない。
「そうだな。一応貰っとくよ。もしかしたらこれから使うかもしれねえしな」
「ん。分かった」
俺はルシフェルからアイテムを受け取り、自分のバッグへとしまった。
確かに、ルシフェルとルイスが居れば負けるということはないだろう。
だが、想定外の事態が起きた時、俺やシズクで少しでも時間を稼がないといけない。
だから、念の為アイテムを貰っておけば対抗出来るかもしれない。
今回受け取ったアイテムも武器に直接属性を付呪出来るアイテムだ。
それも、魔法で付呪するよりも段違いに協力で、さすがはボスからのドロップと言えるほど。
「そのアイテム、エンマが使うの?」
「ん? なんだ欲しいのか?」
「いえ、アイテムなんて今必要かしら?」
「念の為だよ」
「そう」
やはりシズクも安心しきっているようだ。
だけど、俺はこの先なんとなくだが危険なことが起こる気がしてならない。
堕天使はルシフェルや、ルイスが居ることを知っているはずだ。
ルシフェルをボスにしたことから、ルシフェルが仲間になっているとは思わないかもしれないが、それでも充分強いルイスがいる。
本来の力を持ったルシフェルには適わないルイスだが、それでも今俺とシズクが相手して5秒持つかどうかも分からない力を持っているのだ。
そうなってくると、堕天使は必ずルイスくらいの力を持つ者をボスとして置いてくるはず。
「ほら、早く行こう」
「ん、あぁ。すまんな。考え事してたわ」
ルイスの後に続き、俺たちは92層を後にする。
それから、ルイスがボス部屋への道を先導して歩き、ルシフェルがボスモンスターを瞬殺するという作業が始まった。
93層のボスは『イービルアイ』
無数の目を持ち、一つ一つから状態異常の光線を放つモンスターだった。
だが、そんなものルシフェルには効かない。
どんな光線を受けてもルシフェルの体に変化はなかった。
光線を浴び続けながらルシフェルはモンスターの元へと歩き、イービルアイというモンスターの中心にあった巨大な目玉を抉り抜いた。
「弱点……潰した」
目玉をくり抜かれたイービルアイは自分の体を制御出来なくなったのか、宙に浮いていた体が地面へと落ちてしまった。
目玉がダラんと地面に落ちている。俺とシズクは思わず目を逸らしてしまったが、少し経った頃にはイービルアイはエフェクトとなって消えていった。
「さ、さすがルシフェルだな。また一撃だ……」
「少し引いてる……もっと綺麗に倒した方が良かった……?」
「う、ううん? ルシフェルちゃんの倒し方は良かったわよ? ほら、早く進むには一撃の方がいいものね!」
「ほら、早くアイテムを受け取って進むぞ? 堕天使共が俺の存在に気づいてしまう前に」
俺はルシフェルからまたアイテムを受け取り、また進んだ。
94層には通常の雑魚モンスターはいなかった。
だが、代わりに中ボスのような少し強い敵がボス部屋までに4体ほど居た。
どれも俺やシズクが一体一で戦ってギリギリ勝てるかくらいの強さだが、もちろんルイスやルシフェルにはただの雑魚。
もちろん瞬殺されていた。
「それじゃあ、そろそろ僕がボスと戦うよ。妹にばっか戦わせてられないからね」
「ん? 私が倒すから大丈夫だよ?」
「いやいや、僕に任せといてよ。少しくらい妹の前でカッコつけさせてくれ」
ルシフェルとルイスは何度もどちらが倒すか言い合い、結局ルイスが倒すこととなった。
「それじゃ、扉を開けるぞ」
俺が扉を開け、中へと入っていく。
中に入り、俺たちは今回のボス部屋の空間の広さに圧倒された。
だが、圧倒されたのも束の間、俺たちの前に今回のボスが現れた。
「ふむ。少しだけ厄介そうだね」
ルイスが少し苦笑いしていた。
だが、それも分からなくもない。今回のボスモンスターは圧倒的に一人だと厳しい敵なのだ。
「まぁ君たちは見ててくれ。妹みたいに早くはないけど、3分で終わらせるから」
ルイスはボスモンスターである『千手観音像』の前に立つ。
千手観音像は文字通り背中に千本の手を持ち、その全ての手に武器を持っていた。
即ち、ルイスは一人で千人の敵と戦うようなものなのだ。
こうして、俺達が後ろへと下がり、ルイスとボスモンスターの戦闘が始まった。
大体1話につきで1階層から2階層を攻略する感じの予定かな?(ノ∀`笑)




