104話 最終攻略開始
さぁさぁ、物語は進むよー!
俺たちはただ一言も言葉を発することもなく、ルイスが喋っているのを聞いていた。
現実の学校で誰かが喋る時のように眠くなることはなく、真剣に聞くことが出来た。
ルイスの話はとても長かった。
だけど、長さを感じさせない喋り、聞いていて飽きたりしなかった。
「これで、僕の話は終わりだよ」
ルイスの過去話が終わった。
その頃、既に俺の体は動けるようになっていた。
話し始めてからどれくらいの時間が経ったのだろう。
きっと数時間は経っているだろう。
「どうかな? 少しは手助けになったかい?」
ルイスの話で一度だけヒマワリらしき人の話が出たのを俺は覚えていた。
確かに、ルイスがこの世界に来て、壮絶な思いをして攻略し、さらに絶望を叩きつけられたのには同情する。
いや、同情すれば嫌がられるかもしれない。
だが、ルイスがどれほどの思いで妹を殺し、妹と再会できて喜んだのかは俺にも分かる気がした。
「あぁ。ルイスさんの話でこの世界を攻略したあとのことが分かったよ」
「待ってちょうだい。今回もルイスさんの時と同じとは限らないわ」
「それもそうだね。それじゃ僕達が今すべきことは一つ……か」
「ヒマワリちゃん……」
ルシフェルの小さい声でも俺たちの耳には聞こえた。
きっと、ルシフェルも俺たちと同じで、ヒマワリと会いたいのだろう。
俺としてはヒマワリの真意も気になる。
ヒマワリが何者なのか、どうして俺たちに協力してくれたのか。
天使とどんな関係があるのか。
ヒマワリと会って俺は確かめないといけなかった。
「でも、ヒマワリがどこにいるかなんて分からないだろ?」
「そうだね。僕の力でも探すのは無理かな。でも、きっと最上階に居ると思うよ。だから、必然的に僕達は攻略しないといけない。まぁ堕天使達も攻略させるためにヒマワリというプレイヤーを最上階に来させたのかもね」
「でも、私たちに最上階まで登れると思う?」
シズクの言い分も分からなくもない。
俺とシズクの力では絶対に登りきれないだろう。
「大丈夫。私……手伝うから」
ルシフェルが俺に駆け寄って手伝う意志を示してくれた。
「そうだね。もちろん僕も手伝わせてもらうよ」
ルイスは初めから手伝うつもりだったらしく、俺たちに具体的な攻略方法を教えてくれた。
「……という訳だよ。正直君たちは何もしなくていい。僕とルシフェルだけ居れば問題ないよ」
ルイスとルシフェルが俺たちの前で先導してくれて、ボス部屋を最短で見つける。
もちろん、ルートを覚えているルイスが居るから出来る芸当だ。
それでいて、ルシフェルとルイスは俺たちじゃ歯が立たないレベルで強い。
この二人が居れば止まることなく最上階に進むことが出来るだろう。
「それじゃ、行こうか。他のプレイヤーが僕達の後に付いてきても困るからね」
確かに、ルイスの後を歩いている俺たちのことを誰かが付いてくれば、自ずとボス部屋まで辿り着いてしまう。
一度目ならまだしも、何度もすぐにボス部屋を見つければ怪しまれる。そうなると、二人のことを説明しなきゃいけないのだ。
きっと天使と言っても信じてくれないだろう。
だから、俺たちは早く進む必要があるのだ。
「それもそうだな。結構時間が経ってるし、誰かが来たとしてもおかしくねえからな」
「そうね。そろそろクウガたちが来そうだわ」
「クウガ……?」
「いや、俺たちの友人だよ。変なやつじゃないから安心してくれ」
クウガ達には説明してもいいが、あいつらが来るのを待っても居られない。
「まぁ君たちの友人ならいつか会った時に説明すればいいさ。今は先を急ごう」
ルイスが歩き出し、俺たちはその後ろに続く。
こうして、俺達はルシフェルを助け出し、心強い助っ人を手に入れてエデンの塔最終攻略を始めたのだった。




