11話 助けた筈が……
剣を取り出し、見知った敵を前に俺は戦っているパーティーの中へ割り込んだ。
「おい!お前プレイヤーか!? まさか敵を取るつもりか! 横殴りとかふざけんな!」
俺が割り込んだ事により、パーティーのリーダーらしき男が俺に怒鳴り込んできた。
「あ? お前らが手こずってたから加勢しに来てやったんだろうが。なんだ? お前らはこいつを倒せるのか? パーティーの人たちをお前は殺さずに守れるのか? これはゲームじゃないし、死んだら本当に死ぬんだぞ?」
なんとなくリーダーらしき男にイラッときた俺は言いたいことを全て真正面から言ってやった。
もちろん、俺とリーダーが話している時、丁度敵は俺の後ろに来て、俺を攻撃しようとしてきていた。
「おい! お前後ろ!」
「あ?」
敵の鈍器のように重たい攻撃が俺に振り下ろされた。相当強い力で殴ったのか、辺りは砂煙で包まれた。
「大丈夫か!? まさか横殴りして死んだ……なんて……」
リーダーの男は俺のことを見てびっくりしたのか、口を開けて驚いている。
確かに、今俺は振り下ろされた攻撃を防御スキルで守ったが、そこまで驚かれることではないと思っていた。
「なんだよ。だから加勢しに来てやったって言っただろ? こいつのの攻撃くらい俺は防げるに決まってんだろ? ってか、防御スキルくらいお前らも持ってると思うんだが……」
今まで、最前線で戦ってきたからか、防御スキルはもはや必須と思っていた。と言っても、俺の防御スキルは【感知ガード】しかない。これは、自分より弱い敵の攻撃を感知して防いでくれる便利だが強い敵には使えない微妙なスキルだ。
だが、こいつらの返答は俺にとって驚くべきものだったのだ。
「いや、俺は持ってないけど……お前らは持ってるか?」
リーダーがパーティーのみんなには訊ねているが、みんな首を横に振り、持ってないことを示した。
「ちっ。まぁいいや、で、俺は加勢していいのか? ダメなら今すぐこいつの事を放置してどっか行くが」
未だに敵は俺を叩き潰そうと力を込めるが、俺の防御スキルとレベル差によって止められている。
このパーティーのヤツらが俺のことを邪魔と言うならそれはそれで俺は別に構わなかったのだ。
「あの、さっきはごめんなさい。この敵、俺達にはちょっと辛いんで手伝ってもらえるとありがたいです」
俺の事を強いと思ったのか、今度は下手に出てきた。が、まぁそれはそれでいい。俺自身の自己満足でしかないが、誰かを助けれるのは中々嬉しいもんだ。
「んじゃ、サクッと狩るからお前らは下がっててくれよな。正直邪魔だから」
「「「はい……」」」
今度はパーティーみんなで返事をしてくれた。どうやら言うことを聞いてくれたようだ。みんなしっかりと俺から距離をとっている。
「さてと、んじゃ戦闘開始といきますか!」
防御スキルを解除し、まずはモンスターを吹き飛ばす。
そして、距離が出来たことで俺はまず、いつも通り鑑定をする。いくら戦ったことがあって俺より弱いことが分かっていても、鑑定では相手の体力やスキルが分かるから便利なのだ。
ほんと、今の鑑定は使いやすい。
『鑑定開始。鑑定済みモンスター。鑑定結果開示します。
『シザーエヴィ』
エビ型の甲殻類モンスター。異様に大きい腕と、その硬い甲羅からの叩きつけの威力は凄まじい。
レベル:20~25
HP:249~304
スキル:【???】』
まだ俺の鑑定レベルが低いからなのか、的確な数値とスキルは見ることが出来なかった。が、こいつのレベルの範囲が分かるだけ充分だ。
「よし、これなら勝てるな」
俺は俺から距離を取って警戒しているシザーエヴィを睨みつけ、剣を構えた。




