103話 ルイスの過去話4
今回で過去話終わりですよー!.*・゜(*º∀º*).゜・*.
91階層で僕は待ち続けた。
来る日も来る日も妹を見て、何も変化がないことを確認して、あのプレイヤーたちが来るのを待った。
だが、誰も来なかった。
僕は自分の力で妹を救おうとした。だが、無理だった。
確かに、僕は妹に勝てるかもしれない。
だけど、僕だと殺してしまう。
殺せばある意味妹を救えるけど、それじゃダメだ。
兄が妹を殺すなんて本来あってはいけない。
仕方がなかった。そんな言葉は通用しない。
僕が一度殺したのは正当防衛? いや、そうじゃない。
確かに、殺さないと進めない状況だった。
仕方がないといえば仕方がないのだ。
でも、それなら誰かが来るのを待って、その人に殺させれば良かった。
「いや……僕はなんてことを考えているんだ……」
他人に殺させる。
いつの間に僕の頭はここまでになってしまったのだろうか。
一度妹を殺して、今僕の妹は生き返った。
この奇跡に感謝するしかないだろう。
だから、僕にもう一度妹を殺すという選択肢はなかった。
「そうだな……そうなると、まずは妹を救う方法を探さないと」
僕は一度最上階へと戻ってみることにした。
だが、堕天使たちや量産型天使にバレてしまえば僕は捕縛かまたは殺されるだろう。
だから、細心の注意を払って僕は最上階付近へと転移した。
近くに誰もいないことを確認し、僕はあらゆる天使が捕縛されている部屋へと向かった。
昔に僕が閉じ込められそうになった部屋の隣だ。
唯一僕だけ弱すぎたのか、違う部屋に入れられそうになっていた。
いや、そもそも僕だけずっとその部屋に入れて殺すつもりだったのかもしれない。
「ここが天使達の居るところか」
不気味にも、僕が歩いた道には誰一人として居なかった。
むしろ、人、いや、天使の気配すらなかった。
だが、それは都合がいい。
「なぁ、どうやったら堕天使を天使に戻せるんだ?」
僕は扉越しに天使達へと話し掛けた。
もちろん、最初は返答はなかった。
だが、僕は知っている。天使達は人の心が読めるのだ。
人の力も持っている僕の心も読んだのだろう。
次第に天使は僕へと話しかけた。
『妹を救いたいんだね。でも、一度堕天使にされかけ、心を奪われた者を救うのはとても困難だ。君にも羽根があるだろう? それを使えばなんとかなるかもしれないけど……』
僕としてはこんな羽根どうでもよかった。
空を飛べる。
妹と一緒ならどんなに楽しい事だろうか。
でも、今はそんなことどうでもいい。妹を救えるのならば、こんな羽根今にでも毟って捨ててもいいくらいだ。
『あははっ。大丈夫だよ。捨てるなんてことはしないから。僕が知っているのを一つ教えてあげよう。君のその汚れていない純白の羽根を使って、妹を包み込むんだ。でも、それには一つ注意がある。まず、君の全部の力を使うこと、それに加え、そうだね。君の妹が一瞬でも心が戻った時じゃないと効かないだろう』
天使は僕へと情報をくれた。
こんな良い天使を僕は助けようと思った。だが、僕程度の力では部屋の扉を開けることすら叶わなかった。
『ほら。早く行った方がいいよ。見張りが来るから。君は君の妹を救えばいい。僕達はきっと抜け出してみせるから。こんな閉じ込められた状態でも一人の人間、いや、同類である天使を救えたのが幸いだ』
「……ありがとう……ございます」
僕は部屋越しに頭を下げ、その場から91階層へと転移した。
僕が転移しながら見えたのは、僕の妹であるルシフェルの量産型天使だ。
量産型天使が天使達がいる部屋へと入り、そこから見えた綺麗な、とても綺麗な天使が僕へと笑顔をくれた。
そうして、僕はまた91階層へと転移した。
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転移した時、俺の目の前を一人の少女と量産型天使の一体が通っていった。
少し気になってしまったが、妹を救う方法を知った今、そっちよりも妹の方が優先だ。
「あとは、あのプレイヤーが来るのを待つだけ……か」
今妹の心を開いてくれそうな人はあの三人のプレイヤーしかいないはずだ。
俺ですら多分無理だろう。
だから、あのプレイヤー達を待つだけしかない。
幸いにも、この世界に来たプレイヤー達はエデンの塔を順調に登っている。
そろそろ出会えるだろう。
「怪しまれないように……信用を得ないと」
俺はプレイヤーたちが来るまでの間、信用を得るための方法を考えた。
そうして、三人のプレイヤーである、エンマ、シズクが来た。
あと一人いないのが疑問だが、今はこの二人でも大丈夫だろう。
そうして、僕は二人から信用を得た。
結果的に二人を騙して妹を救わせたが、エンマくんの犠牲で妹を救うことができた。
「僕は……妹のことしか考えてなかった……な」
エンマくんが死んで僕は気付いてしまった。
僕は誰かを利用してずっと妹を救おうとしていたんだ。
妹さえ救えればそれでいいと思ってた。
だけど、エンマくんが自分を犠牲にして救おうとしたのを見て、僕はこの二人に力を貸そうと思った。
妹を救ったからじゃない。
妹だけしか考えていなかった、この僕自身が初めてこの二人に力を貸そうと思ったのだ。
だけど、これは妹の為でもある。
正直、今の妹の中で、兄である僕よりもプレイヤーのエンマくんたちの方に心を開いているだろう。
過去を覚えているのは僕だけだった。
だからみんなに過去の話をした。
過去話をしたのは、妹の記憶を戻すため、それに少しでもエンマくんたちの攻略の手助けになると思ったからだ。




