100話 ルイスの過去話
過去話ですよー(ノ∀`笑)
僕と妹がこの世界に飛ばされてきたのは今から数年前の事だった。
僕は妹とアニメを見ていた。
妹は僕と一緒にパソコンを見るのが好きだった。
だから、僕は妹にパソコンを買ってあげた。
バイト代を使って、パソコンをあげた。
妹は頻繁に僕の隣で僕がやっているゲームを一緒にやっていた。
だから、僕と妹は新作ゲームのURLをタップした。
この時こそ僕は妹にパソコンを与えるんじゃなかったと思った。
でも、そんなことを思った時にはもう遅かった。
「大丈夫か?」
「うん。でも、ここはどこだろ……」
妹は不安がっていた。
僕も内心は不安だった。
僕達の周りに無数の人が居るにも関わらず、僕達の前に見えるのはファンタジーの世界のような光景だった。
好奇心とゲーム脳によって少しだけ楽しそうに見えたが、今は妹がいる。
やっぱり不安だ。
そんなことを考えていると、俺たちの上空から声が聞こえてきた。
運営と言うものの声だ。
運営はこの世界について説明した。
この世界での死は現実の死と言われた。
クリアするにはエデンの塔を登るしかないと。
周りの人たちはみんな唖然としていた。
運営の声が聞こえなくなってから聞こえたのは、泣き声、叫び声、怒声、動くものは少なかった。
妹も唖然としていた。
今ここにいるのは危ないと僕は思って、妹の手を取り、ひとまず今いる所から逃げ出した。
「お兄ちゃん。これからどうする……?」
「お兄ちゃんに任せとけ」
僕は妹を安心させようとした。
でも、僕の心の中はまるで異世界に行ったような気分でワクワクしていた。
僕は考えた。エデンの塔を攻略するのならば、その付近に街があるはずと。
まずはそこを目指すべきだろう。ただ、問題なのは装備だ。
だから、僕はひとまず自分のステータスと持ち物、妹のステータスを確認した。
「とりあえず、今の装備でエデンの塔近くまで行こう」
「お兄ちゃんに任せるね……」
妹はゲームがあまり得意じゃなかった。
僕はゲームが得意だった。
この世界がゲームの世界と似ているとはいえ、ゲーム感覚で攻略するのはまずいかもしれない。
でも、それでも世界で活躍しているプロゲーマーの僕はこの世界をゲームのように思うようにした。
そうでもしないと平静を保てる気がしなかった。
きっと、僕と妹はモンスターを殺さなきゃいけない。
ゲーム脳にして、ゲーム感覚じゃないと躊躇してしまう気がした。
「早くしないとみんなが動いて危ない気がする」
「お兄ちゃん。絶対にはぐれないでね?」
妹だけは守らないといけない。
僕がこの世界まで連れてきたようなものだ。
だって、僕が妹のことをゲームに誘ったんだから。
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それから、僕達は安全なモンスターを倒しては、エデンの塔を登った。
その頃には、血気盛んな人達や、パーティーを組んだ人たちも攻略に参加していた。
でも、みんながみんな攻略した訳じゃなかった。
絶望して死んでしまった人。夢だと思って死んだ人。
モンスターを倒せなくて無残に死んだ人。
エデンの塔を半分まで攻略した頃にはこの世界に来た人間の3分の1は居なくなっていた。
「お兄ちゃん。私もそろそろ戦うね」
妹を守ってきた僕。
安全なモンスターを何度か妹に倒させている。
けれど、未だに動き回る危険なモンスターを相手にはさせられなかった。
けれど、今の僕に妹は止められない。
僕はモンスターに攻撃され、動けない状態。
妹が戦うしか生き残る道はなかった。
だから、僕は一つの選択をした。
「ダメだ! お前だけでも逃げてくれ。僕は犠牲になってもいい。でも、家族であるお前を死なせたら……僕は、僕は……」
「お兄ちゃん。それは、私もおんなじだよ? だから、守るね。私、こう見えてもお兄ちゃんに内緒で強くなってるんだから」
結論を言おう。
妹は強かった。
それも、僕よりも強かった。
いつの間に手に入れたのか、真っ黒の鎌を両手に持って、僕が苦戦したモンスターを易々と倒した。
少しだけ嫉妬してしまった。
どうして、妹を守ってきた筈なのに、妹に守られ、妹の方が圧倒的に強いのかを。
それから、僕達は少しだけ気まずかった。
いや、僕が少しだけ妹と接するのが怖くなっただけだ。
妹は悲しそうな顔をしていた。
僕はその顔を見るたびにまた妹と話せなくなった。
エデンの塔90階層に到達する頃には、攻略する人は500人居るか居ないかだった。
残った人も攻略を諦め、馴染んできたこの世界で暮らそうとしていた。
この世界は現実とそう変わらない。自分が強ければ、モンスターを倒してお金を貰って、養える。現代よりも楽かもしれない。
それに、子供は養子を貰うしか出来ないが、性行為は出来る。
だから、この世界に満足している人は沢山いた。
妹も一時期諦めようとしていた。
それは84階層で俺が死にそうになった時だ。
「お兄ちゃん。もう、さ、諦めよ? ほかの人に任せてもいいと思う。お兄ちゃんは頑張ったよ。みんなを先導して、エデンの塔を攻略して、カッコよかった。でも、お兄ちゃん。この世界はゲームの世界じゃないよ? 無茶したら死んじゃうんだよ……」
分かってた。
ゲームの世界じゃないなんて知ってるに決まってる。
だけど、もう遅かった。
今更ゲームじゃないと言われたら、もう攻略出来ない気がした。
だから、僕は妹を無視した。
妹の言葉を無視してエデンの塔をまた登ろうとした。
1ヶ月くらい妹は付いてこなかった。
宿屋で妹は1人待っていた。
そんな妹を見て、少しだけ苛立ちを覚えてしまった。
初めて妹を怒鳴った。
妹は泣いた。僕は困惑した。
どうしてこんなに僕は追い詰められてるんだろう。
「はぁはぁはぁ……嫌だ嫌だ。いつからなんだ。僕はいつから妹と接することが出来なくなったんだ」
最初の頃を思い出して泣いてしまった。
自分が情けなかった。
だから、僕はたった1人でエデンの塔を登った。
困惑している僕なんてモンスターにとって雑魚も同然だった。
攻撃は単調、スキルも使わない、その辺の雑魚にすらボコボコにされた。
死にそうになった。
怖くなって逃げようとした。
でも、僕はモンスターに足を切断された。
「嫌だ、嫌だ、死にたくない……僕はまだ妹と仲直りしてない。だから、だから、助けて……」
痛みで意識を飛ばされそうになりながら、僕は祈った。
眼前にモンスターの顔が見えた。
だから、僕は怖くなって目を閉じた。




