はじめてのふく
赤月が小望の服を取りに行くと言って着いたのは山のおくのおおきな石のまえだった。
「おおきいいし。」
小望はつぶやいた。石は赤月よりもおおきかった。
「おらよっ。」
赤月が石をつかむ。めりめりっと音がなってゆびが石にうまった。そのままうでをよこにふる。ズズズと土をえぐって石がよこにいどうする。
石のうしろにはおおきなあながあいている。赤月もはいれそう。どうくつみたいだった。
「ろう?」
小望はぽつりとつぶやいた。
「ちげーよ。ここはあれだ、倉庫的なもんだな。」
赤月があたまをかきながらいう。小望はそうこ、と口のなかでことばをころがした。
「手に入れたものはここに取り敢えず放り込んどこきゃあいい。小望も使いたかったらつかえばいい。」
赤月はあなにはいりながら言った。こくり、と小望は頷いた。
あなのなかはいっぽんみちだった。少しあるけば、なにか見えてくふ。道のりょうはしにたくさんの物がつみかさなっていた。
「おー、久しぶりに来たが割と溜まってんなあ。」
赤月が笑いながら言う。やまにてきとうに手をつっこんでなにかよくわからないものを出してケラケラ笑っていた。
「おい、小望。こんなかから好きなもん選べ。」
赤月は小望をかたからおろしてたちあがらせる。赤月のうでにささえられて、小望はふらふら歩き始めた。
つみかさなったものたちはいろいろだった。きらきらひかる玉や、きれいな布、人の形をしたちいさななにか、よごれたへんなもの。ほとんどがなにかわからないものだった。
あなのなかをすすむほど、ものはおおくなっていく。ふと、赤いなにかが目に入った。ずいぶん高いところにつまれている。てをのばしてもとどかなかった。
「あれか?」
ほらよ、と赤月がひっぱりだして小望にわたす。赤いひもだった。赤月の着物の色ににてる。
「気に入ったのか?」
うなずく。赤い色がとてもきれいだとおもった。
「かしてみろ。」
ひもをわたす。赤月はしゃがんだ。後ろから小望の前髪を2つにわけて背中にもっていった。
「これでいいだろ。」
小望はうしろをみた。赤月がまんぞくげにわらっている。
「かみ、なくなった。」
ペタペタとかおをさわる。まえがみがなくなっていた。
「髪で顔が見えなかったからな。せっかく鬼はいい顔してんだ、みせとけ。」
そういって赤月は笑った。
「ほら、服探せ。」
赤月がうながす。小望はまたあるきだした。
「あれがいい。」
小望はつぶやいた。指をさして赤月におしえる。物のやまのてっぺんに赤い着物がのっていた。
「あれか。」
赤月がとる。赤月よりも小さい着物だった。赤月はわたしにうでをとおさせる。着物をきるのは初めてで、ふしぎな気持ちだった。
「悪くねえな。」
赤月が小望を見て笑う。小望はすこしおちつかなかった。
「あとは帯か?」
赤月があごをなでながらいった。「帯の結び方なんてしらねえなあ。」とつぶやく。
「しゃあねえ、あそこいくか。」
赤月は立ち上がった。
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