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鬼の話  作者: ひるこ
10/17

ももはあまい

ほのぼのになってると良いなと思います。

 チュンチュンと鳥がないている。ゆっくりと目をひらく。あさひがまぶしくて目を細めた。


「ん?ああ、起きたか。」


 赤月の声が聞こえる。こくりとうなずく。


「ちょっと待ってろ。」


 そう言って赤月は小望をはなした。あたたかい気配がはなれる。少しさむいとおもった。よっ、と言う声をあげて赤月が上の枝にとんだ。見上げるほど高いところにある枝に着地する。そのまま葉にかくれて見えなくなった。


 赤いきものがひるがえって、きれいだなと思った。


 赤月が見えなくなって小望は自分をみる。足をうごかせばカランとげたの音がなる。げたの音は良いと思った。


 カランカラン


 小望は赤月にめいわくかけたい。どうしたらかけられるのだろう。


 カランカランカラン


「楽しそうだな。」


 赤月が丸いものを持って目の前に立っていた。


「げたの音、いいとおもう。」


 小望がいえば、赤月が「そうか」と返した。赤月が小望をかかえてすわる。すっぽりと赤月におさまった。「ほれ」と丸いうすももいろのものを小望にわたした。うすく毛がはえていて、ふわりとにおいがした。


「食ってみろ。」


 赤月がそういって丸いものにかみついた。小望もかじる。やわらかかった。じゅわりと丸いものから血がでてくる。


「甘いだろ。この桃は特別甘ぇ。」

「もも、あまい。」


 赤月がかかかと笑う。この味はあまいというのだと小望はしった。ももの血はあまい。


「はじめてたべた。」

「うめぇか?」

「うん。」


 かじってもかじっても、ももの血はとぎれない。小望ははじめておいしいとおもった。


「ねずみとちがう。」


 そう小望がつぶやけば、赤月があきれた顔をする。


「鼠なんかくってたのか。」


 こくん、とうなずく。


「ねずみよりおいしい。」


「そりゃよかった。」


 そう言って赤月が小望のあたまをなでた。あったかくてあまくてきもちいいとおもった。


 小望は赤月にとてもめいわくをかけたいと思った。


「赤月。」

「あ?」

「めいわくってなに?」


 考えてもわからなかった。


「嫌なこととか、面倒くせえこととかか、手間のかかることとかか?」


 赤月はももをたべながら首をひねった。


「いやなこと、なに?」

「退屈なこと。汚れること、うるせえやつ。あとは、思いつかねぇな。」


 よごれること、うるさいやつ。赤月はきれいだ。よごすのはもったいない気がした。


「赤月。」

「あ?」


 カランカランカラン


 げたを鳴らす。


「あんだよ。」

 赤月がすこしわらった。


「赤月。」

「なんだ?」


 カランカランカラン

 赤月が笑いながら聞く。


「うるさい?」

「うるせえな。」


 赤月が小望の頭をなでた。


「めいわく?」

「あぁ、迷惑だ。」


 赤月がわらっている。


 カランカランカラン


 下駄の音がなっていた。

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