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三段噺 悪魔 人形 正義の蛙 伝記

作者: 波鯨 冬

伝記というものは人間の生涯について書かれていますが、たった一つだけ人間ではない生物について書かれているのです。

その生物は蛙です。

両生類で水場に住むあの蛙。

なぜ蛙の伝記が書かれたのかは謎ですが、確かに存在するのです。

ここで少しその伝記に書かれた蛙の生涯。

人生ならぬ蛙生について語りたいと思います。

あくまでも少しだけ、悪魔のことも少しだけ。


あるところに蛙がいました。

伝記なのだから、いきなり成人しているのはおかしい?

蛙を成人というのも甚だおかしいですが、あくまでも少しだけ。

子どもでない、オタマジャクシでない、成人してからの蛙の噺。

蛙。 緑色の小さいやつ。

どこにでもはいない、変な蛙。

蛙はある少年のペットだった、  

気持ち悪い。 他にあるだろうに。

その少年には妹がいた。 

いつも可愛い人形で遊んでいるような、普通の少女。

いつもベッドの上で両手に人形を抱えて。

いつも窓の外を物欲しげに見ている。

そんなどこにでもいる女の子。

人形の名前はトムとジェリー。

男の子と女の子のお人形。

その日もいつもの様に少女は人形で遊んでいました。

トムとジェリーはかけっこをしています。

まるで女の子の思いを代弁するかの様に。

ふと、気が付くと二人は森に迷い込んでしまいました。

暗くて湿っぽいそんな森。

しばらく、森を歩いていると、灯が見えてきました。

それは、家の灯でした。

暗くて湿っぽいそんな家。

トムとジェリーは家の門をたたきます。

森から出る方法を聞くためです。

家にはお婆さんが住んでいました。

道を聞きに来たトムとジェリーにお婆さんは優しく家に招き入れてくれました。

おいしいお菓子や可愛いお人形。

中でも、男の子と女の子の人形をジェリーはすごく気に入りました。

楽しい時間を過ごしましたが、夜も近づいてきたので家に帰らなければなりません。

すると、お婆さんが言いました。

そのお人形さんは何でも願いを叶えてくれると。

そして、代わりに何か一つを失うと。

ジェリーは願いました。

この男の子と女の子のお人形が欲しい。

家に帰りたい。

そして最後に少女はこう願いました。

「家から出たい

「外に出て遊びたい

「走り回りたい、かけっこをしたい」

「病気を治してほしい」と。

少女の願いは確かにかなった。

人形を依代にして、悪魔を召還し、願いを叶えた。

代わりに少女が失ったものは想像力でした。

もう、外で遊ぼうとも、人形で遊ぼうとすら思えません。

悪の魔物。 悪魔。

悪の見方で、正義の敵、

しかしここには正義の味方もいた。

正しい義を持つ、どこにでもはいない、蛙。

正義の蛙。

眠らざる蛙の王子は自ら少女にキスをして、

悪魔にかけられた呪いを解きます。

蛙は蛙の姿から人間の姿に変わっていきます。

人間に戻った王子は赤子の手をひねる様に悪魔を追い払いました。

悪魔と少女との契約が失敗に終わり、少女は想像力を取り戻しました。

しかし、少女は生涯かけっこをできませんでした。


これが生涯のほとんどを蛙の姿で過ごした、正義の蛙のお話の一つでした。

この伝記はたくさんの人たちの経験談に基づいて書かれた本です。

もちろん架空の存在ですが、架空の存在の伝記を一冊作ってしまう人間の想像力は素晴らしいものですね。


拙い文章失礼しました。

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