気付けた物語
「そのまま学校行くって言ってたじゃん。」
彼女もまた顔を青ざめる。
そういえば、と。気づけば昨日の彼女は短パンにパーカーだった。
今は白のブラウスに暗い緑の短いスカート。中にはちらりと短パンが見えた。
「ん、昨日の、、依頼?」
「へぁ?! あ、いえ、、その、」
突然振られたと思ったら、スカートの中を見てしまったという罪悪感で顔が真っ赤なってしまった。とても暑いのだ。
「うげ、リトまた短パン履いてるー」
金髪の人が俺の視線に気づいたようでちゃちゃを入れる。
「あぁ?この方が動きやすいんだよ。てめぇは何枚皿割ったんだ?あぁ?」
どう見ても喧嘩ごしの彼女はがっちりと怖い。
金髪の人は小動物のように震えだした。
「まいいや。ほら、さっさとしたくしろ馬鹿。ミカ、あんた遅刻嫌いなんじゃなかったっけ?キノ、お前は宿題終わらせたんだろうなぁ!」
お母さんのようにさっさと行動させる。
金髪の人も、「やべっ」などと漏らしてそそくさと部屋に入って行った。
「悪いね。うちの奴らは馬鹿なんだ。昨日の、名前は?」
「あ、えと、麻原功舞です。」
手を差し伸べられて、その手を取って立ち上がると彼女は笑った。
「あたしはリト。コードネームみたいなもんだから、気軽に呼んで。んで、ようこそ。ディティーレ本部へ。」
笑って、紳士のようにお辞儀をするリト。
「あ、功也って呼んでいい?」
「あ、はい。」
「んじゃ、功也。中入っていいよ。」
案内され中へと進む。「ガラスの破片気を付けて。」と合間に入れて、
とても面倒見がいい人なのだと感じた。
玄関から入ってみると、二メートルほどある通路に一つドアがあって、広間に行けば、大きいソファが向いあって真ん中にテーブル。角の所にはテレビがあってその横にはベランダ。
広間の横にも畳の部屋があって、通路のすぐ横あたりには階段。下の階とつながっていた。
と、ふと気が付くとソファの片方に人が寝ていた。
「ラウ!学校忘れんなよ!」
リトのその言葉にびくりと体を震わせると起き上がった。
前髪が交差しているという変わった髪型だが、少し肌が黒く日焼けが目立っていて、身長の割に幼そうな顔立ちは、俺と、年はあまり変わらなそうだった。
「あ、功舞は学校遅れない?どこ住み?」
「東市です。そこの、並樹小です。」
「・・・小学生?!」
「え、はい。」
「ぷ、くぁっははは!全然見えない。なんだぁ、年下かぁ。」
盛大に笑われて、挙句の果てには馬鹿にされた気分だ。
「あたしも東市。鳥芽中だよ。」
「え!あそこって結構不良が多いって聞きますけど、そこのリーダーは女なのにすごいとか、、!」
「マジ?そんな言われてんのか。そこのリーダーはあたし。」
「え!? でも、東市をおさめたって、」
「まだまだ、勝手に行動するやつ居るから。」
「か、かっけぇ。」
話が盛り上がっていると。
「リト!いてきます!」
さっきの金髪の人が階段を上がって、すぐさま玄関を出て行く。
白いブラウスと暗い緑にチェック模様が入っている。
「いってらっしゃ~い。聞いた?あいつテンパると小さい文字言えねぇの。」
クスクスと笑っていると、今度は女の子が上がってきた。
「あれ、さっきの、、お客さん?」
「キノ、彼も小六だって。」
「え!どこ小?」
「並樹です。」
「なぁんだ。同じかと思ったのにぃ~」
「お前は学校遅れるぞ。」
「ム、じゃあ、そこの君も同じだい!」
指を指して焦るキノ、と呼ばれる子。
「俺は、、えっと、、少しくらいなら遅れてもいいから、、」
なんとかはぐらかす。
「おら、さっさと行け。」
「くそぉ~」
投げやりに玄関から出て行く。
なんとなく、笑いが出てきた。
今までの苦悩が忘れられるほど、楽しい。
これが、楽しいなんだなって、今、気付けた気がする。