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ちょっとな物語

学校に着いた。


門を入って昇降口へ、下駄箱の所ではシーンと静まりかえり、階段を上がっている状況では各階から授業の声。


「さすがに遅すぎたかな。」


そんな感じで目的地へ。


「遅れました。すみません。」


ドアを開けて、皆の視線が集まった。


「麻原君!大丈夫?事故にあったのかと、心配したんだよ。」


担任の小梢(こずえ)先生は、とても穏やか。

男なのに、威張るような柄ではなく、お母さん的存在。


「すみません。体調が悪くて、」


「そう。それなら良かったんだけど。あ、でもよくないね。調子が悪かったらすぐ教えてね。」


目線を合わせるためにしゃがむ先生。俺はその行動にとても歪な気持ちを抱く。

軽い返事をして席に行く。後ろの席では成弥がニヤニヤしていた。


「・・・なに。」


「い~や~。お前、調子悪いってウソだろ。」


ぎくりと体が揺れる。


「なんで、」


「なぜなら、お前からあの猫のにおいがしない!」


「・・・は?」


想定外の言葉に肩を落とす。


「だって、お前調子悪い時でも来るの早いじゃん。それに、気分が悪かったりしたらお前、猫に抱きついて服も頭も毛だらけで、なんか獣臭くなるんだ。」


具体的で細かな理由。


「で、俺はどうしてた、と?」


「んなもん知るか。俺は調子悪いのウソだろと言っただけだ。」


「あぁ、そうだったな。」


ふと、窓の外の景色に目が留まる。

ベランダの手すりに止まるスズメ。そのスズメが、俺をジッと見てる気がした。


ただ、怖くて、

目をそらすしかできなかった。


*************************************


キーンコーン


二時間目終了の鐘が鳴る。

乱暴にドアを開ければ先生が肩を震わしそそくさと出て行く。

教室では頑張って視線をそらす方と、キラキラとした眼差しで見てくる方で別れた。


無言で自分の席に座る。


「リ~t((ガンッ 


金髪で青いバンダナの奴がふざけながらやってくる。

ウザいと余計なことを言うと思ったので、机を蹴る。


「あ。ごめんごめん。里川(りかわ)さん、機嫌悪いね。」


あたしの席の前がわの椅子に座り頬杖をつく。


「別に。変わんなくね?」


「はぁ、ほいっ。」


ため息をつくミカは、何かを投げる。


「!」パクッ


それが何かすぐにわかったあたしはそれを口でキャッチする。


「クス 歯、かゆいんだろ。」


「ムス 別に。これがないと落ち着かないだけだし。」コロッ


膨らむ片方の頬には飴玉。


「牙はちゃんと研いでおいてもらわなきゃ。」


「ハッ、それを人間は犬歯と呼ぶんだよ。猫なのに。」


「さっすが、名前に(ことわり)がついてるだけあるねぇ~」


嫌味たらたらな会話も、途切れるのは遅くはなかった。


「あたしの里川は(さと)だ。ばぁか。」


「・・・漢字って難しいね。」


「英圏方面よりはマシじゃね?」


「そか?」


周りから見ればただのコントとなってしまう。


「あ。」


ベランダの、手すりに止まっているスズメ。

私は見つけたと同時に声を漏らした。


「気付いた?で、何だって?」


ミカもスズメを見つめながら言う。

あたしも、目線はスズメ。


「………‥・・・“ごめん。テレビ止まった”だって。」


「・・・」


「・・・」


「マジで?」


「はぁ~、どうせ回線弄ったんでしょ。それか電気代が危ういか。」


「しゃーない。家で見るか。」


「そうしろって言ってんだろいつも。」


そうこうしているうちに数学担当教師の福井が来た。


「寝よう。」


「センセー!見竹(みたけ)君が寝る気満々で~す!」


先生に大声でチクれば焦るミカ。


「え、リト!」


「ミカぁ、学校ではその呼び方やめろつったろぉ?」


小声での会話。


「見竹君。そこ僕の席。」


「え!あ、ごめん!」


「せいぜい寝ずにな」


「こんのぉ~!」


今日も一日、ちょっと賑やかで、ちょっと退屈で、ちょっと不思議な学校生活。

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