落ち着かない物語
リトさんと話をしていると、さっきソファで寝ていた人が来た。
「リト、そろそろにしたら?」
そこまで低くない声で言う人は、ブラウスを着ていてやっぱり中学生。
そして、
「変なマスク」
赤い☓印の書かれたマスクを着けていた。
「・・・」
本人は無言でピクリとも動かないんだが。
「あははは!そうも言ってやるなよ。ラウ落ち込んでるよ。」
「え、」
どうやら落ち込んでいるようだった。
「まいいや。功也、学校まで一緒に行こう。バスなら同じだし。」
「え、あ、、はい。」
ちらりとラウ、、と言う人の方を見ると目があった。
むこうはすかさずそっぽを向いた。
「あぁ、ラウは南市の方だから。学校は違うよ。」
「そうなんですか。」
「おう。そんじゃ、行こうか。」
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中央駅に着いたとき、電車に乗らずに東市に行けることを知った。
そのままバスに乗って、1人席の前後に座って話をした。
「つまりさ、あたしらは気まぐれにやってるなんでも屋なんだよ。」
「お金は取るんですね、、」
「そりゃあたしらも集まってるわけだし。電気代とかはそっちでまかないたいんだ。」
「そんなに以来あるんですか?」
「いや、そんなにないし、本当に大したことなけりゃ金はとらない。」
「なんか、大変ですね。」
「そーなんだよー」
話をしているうちに、小学校の二つ前の停留所にいた。
「そろそろだ。」
ただの、ちっぽけな呟きで聞こえるとは思っていなかったのだが、
「あぁ、そろそろだね。大丈夫?」
バスのエンジン音。そこまで近くない距離。俺は前でリトさんが後ろ。
こんな距離で聞こえるものなのか。
「はい。リトさん、耳いいですね。」
「え、そう? あ、はは、よく言われるよ。」
明らかに焦っている。
なんなのだろう。それになんだか、
「調子悪いですか?」
なんだか違和感。とても居心地が悪そうだ。
「え、分かる?」
「いえ、なんとなく。」
「いや~、まぁ、調子悪いっていうか、、落ち着かないんだ。」
「え、なんで」《並樹小学校前~並樹小学校前~》
遮るようにバスの放送。気が付けば学校の前だった。
「あ、降ります!」
バックを持ち直して急いで降りようと小銭を入れる。
けれど、
「え、足りない。」
掌にのせていた小銭では足りていないようだった。
すると、
「ほらよ。」
足りない小銭を入れるリトさん。
目を合わせてもにっこり微笑まれ、背中を押されバスから降りる。
外からリトさんを見ると、安心したように手を振ってきた。
なんだか、申し訳ない気分だった。