第九十一話
丸弾と大玉弾をひたすらに避け続け、その時を待つ。意識を空間に奔るであろう線に向けているため、その分弾幕への対応に負担がかかるが被弾するよりマシだ
グレイズをしながら待ち続け──空間に薄っすらと奔る線を確認。あちこちに向けて奔る線の一つが俺に向いていたので、当たらない所に移動しつつ弾幕を躱す。──先程と同じく唐突にレーザー弾が発射される、俺が見たその線をなぞる様に
何度かレーザー弾を避け続け──フッと弾幕が消える。スペルカードブレイク……時間切れの様だ
「やるわね……お見事よ。被弾数を二回くらいは稼ぐつもりだったのに、一回で抑えられるなんてね」
「危なかったよ、本当に。次は俺の番だな」
スペルカードを一枚取る。最初に作ったのは相手の弾幕に対して発動させる、謂わばボムに当たるためそのままではあまり使えない。だからこそ……二枚目のコイツは使える様にした
──迷符「道標無き迷路」──
読み上げると同時に辺り一面に大玉弾が配置され移動を制限する。同時に、俺と紫の間に弾幕で作られた道が三本現れる。本来はもっと作れるが……お披露目なのだからこれくらいだろう
「あら道を選ぶのね……ふふ、まるであみだくじみたい。つまるところ、悠哉の元へ行きたくば正しい道を選ぶ必要が有るわけね……良いわ、運試しといきましょう」
紫が選んだのは右端。弾幕を避けながら或る程度進むと、道が少しずつ広くなっていく。正解は道が狭くなるため、紫はどうやらハズレを引いたらしい……周りを弾幕で囲まれ、さしもの紫も苦戦している様だ。そして──ピチューンという音が聞こえてきた。被弾した、つまり紫を被弾させることに成功したのだ
「あ痛たた……まさか当たるなんて。本物は道が狭ばりハズレは道が広くなる……普通は反対だけど、だからこそ引っかかってしまう……うん、良い出来だわ」
被弾したというのに、冷静に分析してしきりに頷く紫。正直隙だらけなのだが、何故か撃つ気にならない……というか撃ちづらい
「ちなみに、アタリだとどうなるの?」
「ん? あぁ、俺の前の安全地帯にこれる。つまり撃ち放題」
「……訂正、あんまり良くなさそうね。確率の問題だけれど、もし確率をどうこうされたら完全に隙だらけじゃないのよ……」
ヤレヤレと首を振る紫。だが、コレには秘密が有る。実は正解を全く無しにも出来る……のだが、ソレをやると弾幕ごっことしてどうかと思ったから今の所この案は廃案だ
「さて、これで一対一のイーブンだが……仕切り直しだな」
「あ、言い忘れてたけれど私の勝ちよ?」
「は? 何言ってんだよ、まだ残機は……?」
ゴッ、と頭と背中と足に衝撃が。そのまま地面に倒れる俺と、ソレを見下ろす紫
「…………お前、ソレは卑怯だろ」
「あら、撃つなとは言われていないもの。それに弾幕ごっこ中よ、油断大敵よ?」
「……萃香に殴られてしまえ、んで蹴られてボコボコにされればいいんだ」
「ちょ、彼女に向かって酷いんじゃないの……」
──こうして、俺と紫の対戦は幕を閉じた。藍には微妙な顔をされたが、まぁ仕方ない。萃香は……紫と何処かへ行ってしまったが、ざまぁみろである




