第九話
「──反省したか?」
「必ず仕返ししてやるから覚えていろよ……」
そんな会話をしながら朝食作りに勤しむ。紫によれば、もう少しこの世界に慣れてからする筈だったらしく前倒しをして行った藍はこっぴどく叱られていた
さしもの藍も主人の説教は応えたらしく、尻尾を九つともシュンとさせていた。まぁ、死ぬ思いをした俺の身にもなってほしいもんだ
「っと、出来た! 藍、これ頼むな〜」
「分かった、あこっちを代わりに任せるぞ?」
「お、了解。任せておけ!」
……まぁなんだかんだで仲良くはなれてる筈だ、多分だけども。邪険に扱われる事はないし、無視もされてないし……
「「「頂きます!」」」
三人で少し遅めの朝食を食べていると、紫がジッと俺を見てきた。はて、何か紫にしただろうか?
「どうした紫、何か有ったか?」
「……結局、貴方は飛べるようになったの?」
「あぁ、その事か。バッチリとは言えないけど、そこそこなら大丈夫だよ。流石に長距離飛行や弾幕ごっこでの使用は無理だろうけど」
「なら、まだまだ要練習ね……。藍はこの後結界の点検作業で出るけど、貴方はどうする?」
「ん〜そうだな……紫と二人、のんびりするさ」
なんて言ったら、藍に睨まれた。解せぬ……
「紫様に何かしてみろ……ただじゃ済まさないぞ……」
「なんで俺が紫に変な事するの前提なんだよ……なぁ紫?」
やれやれ、と紫も首を振る。のんびり、とは言ったが正確には弾幕を出す練習をのんびりと行うつもりだ
朝食を食べ終わって後片付けも終わり、藍が出て行ってしばし──程良く腹具合が落ち着いた頃
庭には、俺と紫が相対するように立っていた。紫のアドバイス通り、何度も試しているのだが……
「……出ねぇ。弾は出ても、弾幕が出ねぇ……なんでだよ」
「すぐに一つ出せたから、後は簡単だと思ったけど……まさかこっちで躓くなんて。普通逆よ? 一つに苦労して後はスイスイ〜はあるけど……ねぇ」
その後、何度やっても結果は変わらず──先に俺が音を上げてしまい、一旦練習を取り止めることに
「ん〜、何がいけないんだろ? 一つを増やせば解決しそうなのになぁ……」
「そうねぇ、考え方がダメなのかしら? 一つを複数にするのではなくて、初めから複数をイメージするとか」
「なるほどな。最初から複数の弾をハッキリと頭に浮かべて、ソレを発射するイメージ……よし! 今度はそれでいくか」
言うのは簡単だが、実際にやるとなるとこれがまた難しい。だが、数にして十個までなら自由に出せるようにまでなった。考え方が悪かったのか……?
「まぁ、初日でここまで出来たら上出来よ。後はどこまで数を増やせるか、この一言に尽きるわね」
「……もう、無理……」
もし見えるなら、今の俺の頭からはきっと煙が立ち昇っているだろう。それほどまでに頭を使った気がするぜ……
「さ、元気出して? お昼は私が作ってあげるから」
「……作れんの? 頼むから、食べれるのを頼むぜ……」
「し、失礼な〜! 藍に料理を教えたのは私なのよ? 舐めないでもらいたいわね」
──昼ご飯は紫が作り、食べたのだが……味は美味かった。だが、何をどうしたのか後片付けが大変だった……