第八十五話
俺と橙の些細な会話から端を発した紫の幻想雪合戦。なんでも、幽々子や永琳といった各パワーバランスのトップ連中に掛けあったり博麗にも手伝ってもらったりしている……と、呆れ顔の藍が両腕いっぱいに食材やら雪掻き道具を携えてぼやいていた
ハムハムと好物の油揚げを食べつつ、積もりつつある雪を屋敷の屋根から降ろす藍を見て正直──紫が賢者だというのは人選ミスではないのかと思いはじめている。だって、結界の点検やらあちこちへの手回しやら……幻想郷にとって重要な事項の殆どを彼女がやり、肝心の紫はと言えばお昼を過ぎても布団にくるまって寝る始末
──話を戻すか。藍の冷たい視線と苦言の数々を物ともせず……気にしてすらいないのかもしれないが、紫は連日動き続けていた。今日はなんでも旧友に手土産持って会いに行ったとか
藍に、その旧友について尋ねてみたところ……
「まぁ、旧友かな……うん。紫様はそう思ってるようだけれど、肝心の向こうはどうなんだろうか……あはは」
──それ、単に紫が気づいていないだけでは? さらに詳しく尋ね、その相手がなんと鬼だと聞き……藍がはっきり明言しなかったのも頷けてしまった
鬼って嘘偽りをなにより嫌う。対して、紫は嘘偽りや持ち前の胡散臭い雰囲気や言い回しで煙に巻くのを得意とする。どう考えても対極で、交わりそうにないが……酒でも盛ったのか?
「ただいま〜! みんなちょっと出てきて頂戴〜!」
噂をすればなんとやら。紫が戻ってきたようなので、藍と共に向かう。先に橙が居て……何故かカチコチに緊張している
「みんな居るわね? 今回の一件に協力してくれる事が決まった──」
言いながら隣に視線をやる紫。釣られて俺達も視線を向けると、幼女が一人居た。だが、ただの幼女ではない……頭から角が二つ伸び腰には瓢箪。さらに言って、酒臭い上に酔ってるのかフラフラとフラついている
「あはは、初対面のヤツも居るし改めて! ──妖怪の山、鬼の四天王が一人……伊吹萃香たぁあたしのことさ!」
……まさかのご本人登場だった




