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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第七章──決死、人里防衛戦──
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第七十九話

「刀良し、霊撃符良し……念の為のスペルカードと予備良し! 藍、そっちはどうだ?」


「うむ、此方も大丈夫だ。っとそうだ、コレを渡しておく。いざという時に、遠慮無く使え」


手渡されたのはお札。博麗の名が書かれているが……


聞けばお札を中心に、結界を一時的に張り巡らせる事が出来るらしい。応用で、閉じ込めたり隔離したりも出来るとのこと


「さて……行くか! 気をつけてな、藍」


「そちらこそ、気をつけろよ? ──絶対に死ぬな、危なくなったら私を見捨ててでも生き残る事を考えろ。コレは約束だ」


「断る。そうなったらそうなったで、お前も連れて這ってでも生きて帰る。それだけさ」


「……馬鹿者が」


──東門が開かれ、妖怪達が一斉に此方を見る。ほぼ同時に俺達は走り出していた……


斬り捨て殴り倒し、ただひたすらに目の前の妖怪の生命を奪っていく。その事が罪悪感として少しずつ心の中で大きくなっていくが、無理矢理に捩じ伏せて突き進む。隣では藍が、式神との連携で瞬く間に数を減らしていく


「トマレ、ニンゲンヨ」


或る一体の妖怪が、目の前に立ち塞がる。今までのとは全く異なる異質な雰囲気に、直感で判断する──コイツが元凶だと


人型のソイツは、口元に薄っすらと笑みを浮かべまるで肩慣らしをするかの様にグルグルと肩を回す。その際に伸びた長い爪と口から覗く牙がよく見え、あまりの鋭さに心が萎縮する……


背丈は此方より少し高く、身体能力も妖怪である向こうが上。先に感じた雰囲気も合いまって、妖怪らしさ──不気味さが漂うソイツに……意を決して話しかける


「……大人しく、八雲に下ってくれるのか?」


「イヤ。キャツハアマスギルガユエニ、イマニミヲホロボス。ニンゲンヨ、テヲヒケ。サモナクバ……ウシロノニンゲンドモトオナジヨウニ、コロシテクレヨウゾ」


ビリビリと肌に突き刺さる殺気に、思わず身体が震える。だが、止まるわけにはいかない。守ると決めたのだから……!


「……断る。お前は……必ず止める!」


「コウショウケツレツカ……ザンネンダ!」


かん高い金属音が辺りに響き渡る。刀と爪が幾度となく交差し合い、火花を散らす。徐々にお互いの身体に傷が付きはじめ、薄っすらと血が滲む


刀を突き出せば爪と牙で器用に防がれ、お返しと言わんばかりに両腕から伸びる爪の乱撃を受け流し──不意打ち気味にやって来る牙の一撃を転がって躱す


「……ヤルナ、ニンゲンヨ」


「……そっちこそ」


──ふと、辺りに意識を巡らせると異様なまでに静かになっている。動いているモノが俺とコイツ以外に居ない……? そこまで考えて、気づく。藍が居ない事に


「アノキツネガシンパイカ? ……アソコダゾ?」


指差す先には──妖怪の死体に囲まれた藍の姿が。周りに散らばる紙片から見て、式神が打ち破られたのが分かる。恐らく物量に押されたのか……


まるで行ってこいと言わんばかりにその場に腰を下ろして笑うソイツから目を離し、直様藍の元へと直行する。弾幕を張って霊撃符を数枚切り、取り囲む連中を全て吹き飛ばす


「藍!? おい、無事か!?」


「す、すまない……油断したっ。式神に供給していた妖力を突然切られて、数に押されてしまったんだ……」


幸い傷はあまり深くなく、妖怪本来の自己再生力の力で治りつつあった。──嫌な予感が背中を駆け登る。咄嗟に藍を突き飛ばし……背中に焼ける様な痛みを感じてその場に崩れ落ちる


「……ダカラ、アマイトイッタノダ」


「……ッ! 今来んのかよ……!」


歯を食いしばって立ち上がる。藍も悲鳴をあげたため霊撃符をもう一枚切り、藍を見て──絶句した。治りかけていた傷口が開き、出血し始めたのだ


「てめぇ……! よくも藍の回復力にまで、穴を空けやがったなぁ!?」


「ゴメイトウ、クハハハハッ!」


どんどん衰弱していく藍をなんとか抱えて起こす。すぐにどうこうなる程重くはないが、このままでは間違いなく藍は……!


「ゆう、や……逃げろっ! 私を置いて……早くっ……!」


咳き込み、吐血しつつも震える指で門を示す藍。俺自身も背中に軽くは無い怪我を負った今、確かに人里の中で待機している連中の助力を得るためにも、此処は藍を置いてでも戻るべきなのだろう。だけど……!


無言でお札を一枚切る。藍から貰ったたった一枚を、藍に押し付け──直後に結界が構築される。何故? と藍の顔が歪むのを見て、敢えて笑って見返す


「安心しろ。二人とも助かるし、援軍もきっと来る。だから……少しだけそこで待っててくれ。なぁに……すぐに終わるさ」


言葉は伝わらない。でも、口の動きで藍は理解した筈だ。……死ぬわけでもないのに泣かないでもらいたいもんだ


「シヌカクゴハデキタカ? オロカナニンゲンヨ」


「悪いが、死ぬつもりなんかこれっぽっちも無いんでな。……来いよ、相手してやる」


──背中の傷からは絶えず痛みと血が流れ出し、身体は少しずつ重くなっていく。でも、それでも……俺はこの選択を後悔しない


「……うおおおぉぉぉッ!!!」


雄叫びを上げ、俺は単身敵陣へと突っ込んだ。一体でも多く倒し、かつ藍とともに生き残る。死ぬなんざ真っ平御免だ、だから──


──最後の最期まで……足掻いてやる!

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