第七十六話
さて。紅魔館から戻ってきた俺達は、その足で人里へと向かった。何か有るとするなら、防御の比較的弱い此処が狙われる……そう踏んでの行動だ
「なぁ紫、ところで博麗って強いのか? ダラダラしてるしやる気も無さそうだし、魔理沙の方がよっぽど強そうだけど……」
「そうね……実力自体はそこそこね。彼女、努力する事を嫌ってて修行をなかなかしたがらないのよ。だから実力はそこそこ」
「……引っかかる言い方だな。まるで、実力以外で紫と対等になれると言いたげだな」
そう言う俺を見てクスッと笑う紫。釈然としないので、先を促す
「あの娘には……ソレを補って余りある天性の才能が有るのよ。だから強いの、それこそ私や藍を相手に立ち回れる程にね。と言っても……実力が足りない時が有るのも事実だから、修行をしろと言い聞かせてはいるけれどね」
「……天性の才能ね。羨ましい限りだが、努力を否定されるのはあまり良い感じはしないな。俺みたく、必死になって修行してるヤツとか居るだろうに……修行不足で結界にまで影響は出ないだろうな?」
「……大丈夫よきっと、多分」
何故か表情を固くしつつ笑う紫を見て、いや〜な予感が過る。無いと思いたいが、何か有れば影響を受けるのはこの人里だ
──なんて考えていると、藍が立ち止まり符を耳に当てて話し始める。何て言ったっけ……外の世界の通信機に近い機能を符に持たせたんだとか言ってたソレと会話をするうちに、段々表情が険しくなる藍
「紫様、大変です。──例の連中が博麗の巫女の結界より脱出したそうです」
「……当たっちまったぞオイ、どうすんだよ……」
正確には博麗の巫女の実力と言うより、向こうの妖怪の能力に寄る所が大きいそうだ。実力云々も幾分は有るかもしれないが……兎に角情報によると、大人しく結界に閉じ込められていた妖怪のうちの一体が立ち上がり結界に手を当てた──その瞬間人一人が通れる程の穴が空き、連中が溢れ出してきたのだとか
しかも、当初から予測されていた様に人里目指して猛進しているらしい。監視していた藍の式神や博麗が同じく猛追しているものの、大部分はまだ健在
「……まさか本当に来やがるとはな。紫、策は当然有るんだろ?」
「えぇ、もちろん。貴方は人里の守護者に会って、人間を出来るだけ安全な場所へ避難させて。私と藍と霊夢の三人で結界を張った場所まで人間を移動させれば、被害は零に抑えられる筈よ」
「了解。後は援軍が来るまで持久戦ってとこか……気にする点は、博麗の結界に穴空けやがった妖怪か。能力持ちとは厄介な……」
予め決めていたとはいえ、こうもとんとん拍子で展開が進むとは……一層気を引き締め俺は人里の守護者が居るであろう寺子屋へと急ぐ──




