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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第七章──決死、人里防衛戦──
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第七十四話

朝。いつもの様に橙と二人分の朝食を作ろうと台所に立っていると、隣にスキマが開き中から藍が血相を変えて現れた


「藍様! おかえりなさい!」


「あぁただいま橙。悠哉と話があるから、少しの間任せていいかい?」


「はい! 任せてください!」


朝食は橙に任せ、藍の先導の元一室へ。座るや否や藍の表情が苦々しげに歪むのを見て、何か有ったのを確信する


「……何か有ったんだな。一体、話し合いはどうなった?」


「……落ち着いて、聞いてほしい悠哉。その……紫様が……紫様が……」


ワナワナと震えて次の句が告げない藍の背中をさすり、どうにか落ち着かせる。すまない、と一言言ってから……藍がこう告げた


「……紫様が──連中から攻撃を受け負傷された」


ゴッ! と大きな音が。気づくと、無意識の内に固く握り締められた右手で床を殴っていた様だ。静寂が部屋を包み込む中、腹の底から湧き上がるナニカを無理矢理にねじ伏せ藍を見る


「……そう睨まないでくれ。私の落ち度だと、痛い程理解しているつもりだから……」


「いや、藍が悪いと思ってはいないさ。ちょっと気持ちの整理がつかなくてさ、顔に出てたんだろ。ところで……紫は今何処に?」


「幸い軽傷で済んだから、紅魔館にて博麗の巫女や幽々子様達とこれからを会議されておられるよ。怪我の方も魔女がすっかり治してくれたし、大事には至っていない……」


ホッと胸を撫で下ろす。紫にもしもの事が有ったらと思うと……いや止めよう、縁起でもない


──と、唐突にスキマがまた開かれ今度は紫本人が顔を出した。すっかりやつれてしまったその顔には暗い影が落ち、最後に見た時よりも弱々しく感じられた


「悠哉……悠哉ぁ!」


俺の顔を見るなりスキマから飛び出してきて抱きつく紫を支え、震える背中を同じ様にさすって落ち着かせる。その間、紫はただただ涙を流して泣いていた


「落ち着いたか? 悪かったな、紫が大変な時にそばに居てやれなくて……」


「……大丈夫よ、ありがとう。貴方が悪いわけではないのだから、考え過ぎないで」


グスッと鼻を鳴らし、真っ赤に充血した瞳と見つめ合う──紫の瞳から、また涙が溢れ出し始める


「ねぇ悠哉……私には無理なのかしら? 私の力がまだまだ足りないから、他の皆は着いてきてくれないのかしら?」


──もう、心が折れてしまいそうよ……──


紫の口から零れたのは、紛れもない弱音だった。あの紫が零したのだ、余程堪えてしまったのか……本気で取り組み奔走していたからこそこの一件は紫の心に深い傷をつけてしまっていた


「……なぁ紫。今からちょっと無責任な事を言うけど、黙って聞いててくれないか?」


コクン、と頷く紫を見てそばで控える藍も頷いたのを見て──俺は話し始めた


「紫は、人と妖怪の共存出来る世界を作るために幻想郷を作ったんだろ? 色んなヤツにバカにされて相手にされなくなっても、必死に頑張って努力してようやく作り上げた大切な場所だろ? だったら──だったら今更他のヤツがどう言おうが何をしてこようが関係ない、紫は紫の道を行けばいいんじゃないのか?」


黙ってジッと俺を見て話を聞く紫と藍。俺は尚も続ける


「最初は独りで頑張った。次は藍がそばに居て、二人で頑張った。だから今度は……俺もそばに居る。俺も一緒に紫の手伝いをして、負担を少しでも肩代わりしてやる。必要なら、矢面にも立ってやる。だからさ……もっと俺を頼ってくれ。あまり出来る事は少ないし頼りないかもしれないけど、それでも俺は──紫を助けてやりたいんだよ」


言ってから急に恥ずかしくなり、頭をかいて視線を外す。しばし無言のまま時間が進み、ゆっくりと紫が口を開いた


「……そうよね。本当に、今更よね。他がなんと言おうと、関係ない。何故なら私は──妖怪の賢者なのだから! それからその……たまにはカッコいい事言うのね? 惚れ直したわ……ありがとう悠哉」


ニッコリと笑う紫を見て、持ち直したと確信し後を藍に任せる。そろそろ橙が朝食を作り終えた頃合いだろう


だが、問題はこれだけでは終わらなかった。紫に手を出した連中がまだ、幻想郷に滞在しているのだから……

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