第六十七話
「……ゆ、ゆゆこ……?」
「こんばんは悠哉、お元気そうでなによりだわ〜」
相変わらずのふわふわした雰囲気を漂わせ、西行寺幽々子はソファーへと座る。妖夢が居ない所を見るに、恐らくは黙って来たのか……
「さて、私達二人の気持ちを貴方は改めて知った。その上で問うわ……貴方はどちらを取るつもり?」
「たとえ選ばれずとも……私は恨まないわ〜。貴方の幸せが一番ですもの〜」
そうは言われても……二人には二人の良さが有り、俺はそこが好きだ。だからこそ告白された時は嬉しかったし、気持ちに応えたいと心の底から思ったのも事実だ
だからこそ──どちらか片方だなんて、選べない。選べる筈なんてないんだ……
「俺は……俺には、どちらか片方だけだなんて選べない。たとえ傲慢だと言われても、優柔不断だと言われても……俺が二人を好きなのは変わらない。だから──」
──こんな俺で良ければ、二人とお付き合いをさせてください──
頭を下げた俺には、二人の顔は見えない。だからどんな表情を浮かべているのか分からない。断られるかもしれないし、軽蔑されるかも……
「…………はぁ、全く貴方って人は。甘いのね本当に……でも嬉しいわ、そう言ってくれて」
「これも、惚れた弱味かしらね〜。ねぇ紫〜?」
そう言われて顔を上げると──笑顔の二人が。よろしくお願い致します、そう二人に言われ気持ちが次第に落ち着き始める
「……何が有っても、絶対に俺が守る。力及ばずとも、どんなに不利な状況だろうと……二人は必ず守ってみせる……!」
「なら、毎日の修行は欠かさないでね? 頼りにしているわよ、悠哉」
「ふふっ、それじゃあ守ってもらいましょうかしらね〜。お願いね悠哉〜」
──一件落着、そう思っていた。だけど、一名だけが苦言を呈した
「お二方、本当によろしいのですか? 後々厄介な出来事が起こるのは、確定的に明らかでは……?」
「藍、大丈夫よ。その時は私も幽々子も彼も、全力で立ち向かうだけよ? もちろん貴女にも期待しているわよ」
「そうそう〜、大丈夫よ〜。心配は要らないわ、だから安心して頂戴な〜」
二人がそう言うのを聞きながらも、藍は俺を睨みつける様に見て口を開いた
「悠哉……一言だけ言っておく。お前の選択はお二方を想っての事かもしれないが、周りはそうは取らないかもしれないぞ。もしお二方の身に何か有ってみろ、そしてお二方を見捨てでもしてみろ……その時は──私がお前の首を取る」
殺気を孕んだ瞳に見据えられ思わず怯む。それ程までの圧力が、藍の瞳には有った……
兎も角、こうして俺は八雲紫と西行寺幽々子という、幻想郷のパワーバランスの一角を担う人物と正式にお付き合いをすることが決まった




