第六十三話
「ごめんね悠哉、大丈夫?」
「もう大丈夫だってフランドール。痛みだってパチュリーのおかげで治ったし、服も綺麗にしてもらえたからな」
結局、もう一度パチュリーの世話になりついでに着ていた服も直してもらった俺はフランドールと一緒に廊下を歩いている。咲夜が現れて準備が終わったから応接間に来てほしい、と言いに来たからだ
本来なら一緒に来た紫達と──そう思っていたのだが……博麗がさっさと紫達を連れて行ってしまったため残ってくれていたフランドールを供にして向かっている。小悪魔やパチュリーは魔法で先に向かった、ともフランドールから聞かされていたのでここは急ぐとしよう
「フランドール、少しスピードを上げるか。あまり長々と待たせるのも、レミリア達に失礼だろう?」
「うん、分かった! あ、悠哉……そのね。私の事はフランって呼んでほしいな。いいでしょう?」
「あぁ、構わないならな。んじゃあフラン、行くか!」
フランドール改めフランと気持ちスピードを上げて、応接間へ。場所はフランが知っているので迷う事なくスムーズに進み続け、大きな両開きの扉の前に辿り着いた
「此処だよ。それじゃ悠哉、開けて!」
「ハイハイ、レディの頼みとあっちゃあ聞かないわけにはいかないよな……っと」
ゆっくりと扉を押し開けて──圧倒された。何がって部屋を彩る飾り付けもさることながら、自動で音楽を奏でる楽器達に美味しそうに盛り付けられた料理。そして部屋の上座に有るまさに玉座に相応しい椅子に座るレミリアに、だ
「あ〜お姉様ったらまた座ってる! 前にあそこに座った時は、滑って落っこちたのに……危ないから止めなさいって咲夜に言われてた筈なのに……」
「……まぁなんだ、そんな事言ってやるな。レミリアだってこの館の主人として見栄を張りたいんだよ、きっと。だから暖かく見守ってやるのも、時には必要だぜ?」
「そっか……うん、じゃあ私お姉様を暖かく見守ってあげるね。頑張れお姉様!」
「そこ! 全部聞こえているわよ!?」
レミリアが何か言っているが聞こえないフリをして──フランも聞こえないフリをしていた──そのまま歩いて入室する。一人でに閉まる扉を背にして先ずはパチュリーの元へ
「パチュリー、また世話になってしまったな。ありがとう」
「いいのよ別に。にしても……災難ね、貴方も。でも妹様は悪気が有ってやったわけじゃないから、そこは分かってあげて頂戴」
「もちろん。じゃあまた後で」
側に控えていた小悪魔にも会釈をしてその場を離れる。次に紫達の元へ──は博麗が居るので断念。時間を置く必要がありそうだ……
魔理沙は咲夜と共に居て何か話し込んでいる。恐らくは図書館の本の事についてだろうか、パチュリーがしきりに視線を奔らせていたからだ
「こほん……今日はわざわざ遠い所から来てくれてありがとう。紅魔館主催のパーティーは、今この時を以って開催を宣言するわ! 皆、思い思いに存分に楽しんでいって頂戴!」
レミリアが声高らかに宣言し、パーティーが始まる。だが、楽しみに沸く心とは別に嫌な予感が奔ってしまう。何事も無く、無事に楽しく終われば良いのだが……




