第六十一話
先に進むにつれて大きくなる喧騒に何事かと足を早め、いつもパチュリーが居る少し開けた広間に出る。そこでは、机側に小悪魔と紫と藍が固まって待機しており広間の真ん中でパチュリーと魔理沙が言い争っていた
「だから何度も言っているけれど、人の所有物である本を勝手に持ち出さないで! ただでさえ貴女のせいで図書館は荒れる一方なのに、この上さらに本まで持ってかれると……もうたまったものじゃないわ!」
「そんなにギャーギャー言う事じゃないだろ! それなら言わせてもらうけど、いつもいつもちゃんと断ってから持って行ってるだろ! パチュリーや小悪魔にも分かる様にちゃんと死んだら返すってさぁ! なんで分かんないんだよ!」
──だいたいの事情は読めた、が……魔理沙よ。死んだら返すはないだろ……もうそれ借りパクとかのレベルじゃないぞ……泥棒じゃねぇかよ
横でレミリアと咲夜もため息を吐いているから、恐らくこのやり取りは見慣れた光景なのだろうか。で、博麗はと言うと……紫に何かを詰問していて騒ぎに無関心ときた。アイツは一体何をしているんだよ……
「──もういいわ、これ以上は埒があかないわ。こうなったら……弾幕ごっこで勝負よっ!」
「あぁいいぜ、また今回も私が勝って持ってかせてもらうぜ!」
言うが早いか互いに宙に浮いてスペルカード枚数と被弾回数を宣言し合い──所構わず撃ち始めたのだ! 弾幕は床や壁、本棚に当たると何故か跳ね返りあらぬ方向へと向かいはじめるので他人事ではない。流れ弾に当たるなんて御免被りたい
「行くわよ……! 喰らいなさい……!」
──日符「ロイヤルフレア」──
パチュリーが手にしたスペルカードを掲げ唱えると、たくさんの光弾と共に紅く輝く大玉が転がり出る。日符と辺り、恐らくあの紅いのがそうなのか……にしても……
「おわぁ!? ちょ、ストップ! 危ねぇ、止まって頼むからぁ!?」
弾の数が増えるという事はつまり流れ弾の数も増えるわけで──ポンポンポンポン流れてくるのをひたすらに避け続ける。ジャンプしたりしゃがみ込んだり、転がったり這いつくばったり……兎に角必死で回避を続ける
魔理沙も同様に、箒を上手く操って大胆にグレイズを駆使しつつ回避して──あ、頭に当たった。アレは痛いな……
「くぅぅ……今のは効いたぜ……だけど今度はこっちの番だぜぇ!」
──恋符「マスタースパーク」──
魔理沙が懐からナニカを取り出し、前方のパチュリーへと構える。パチュリーが躍起になって障壁の様なモノを前方へと張り巡らしているので前方集中型のスペルカードなのか……?
「いっ……けぇぇぇぇぇえええ!!!」
掛け声と共に吐き出されたのは──極太のレーザーが一つとたくさんの星型の弾幕。特にレーザーは見た目通りの威力が有るらしく、パチュリーの顔が徐々に苦悶の表情に歪んでいく。あの分だと長くは持たないだろう
「……で、こっちにもやっぱ来んのかよぉ! ちくしょぉぉぉおおお!」
パチュリーのが終わったと思ったら次は魔理沙の分。因みにレミリアは咲夜と共に安全地帯へと避難をし、紫達はスキマで全て吸い込んで無傷という……避けてんの俺だけじゃん……
「──あ……無理だわコレ」
バランスを崩した所に殺到する弾幕を最後に視界いっぱいに収めて──俺はそのまま意識を失った。魔理沙とパチュリーめ……覚えてろよ……
巻き添え程ヒドいモノはない、と




