第六十話
魔理沙と咲夜の二人と共に入館し、魔理沙はその足で図書館へと向かい俺は咲夜の案内でお嬢様──レミリアの元へと歩き出した
部屋の前に来ると、内から話し声が聞こえてきた。どうやら先客が居るらしい、しばらく外で待つことに
さて、ただ待つのもアレなので咲夜と談笑をして過ごしていると内からやっと声がかけられた。レミリアのヤツ、分かってて黙っていたな……
「お嬢様、失礼致します」
「お邪魔します」
軽く一礼して入ると、レミリアともう一人──博麗霊夢が不機嫌そうな顔で紅茶を飲んでいた。応対していたレミリアの表情から察するに……かなり大変そうである
「久しぶりレミリア、お招き頂きありがとうございますってな。元気そうで何よりだよ」
「ありがとう悠哉、来てくれて嬉しいわ。あまり派手にとはいかないけれど、今日は楽しんで行って頂戴」
握手を交わしている最中、博麗がフンと鼻を鳴らす。相変わらず俺の事を警戒しているようで、視線を合わせない割には俺の挙動を先程から監視している
「まさか、こんな所でまで会うなんてね。随分と顔が効くのね」
「たまたま知り合えた友人だから、かな。こっちこそまさかアンタに会えるなんて思ってもみなかったよ」
会話はそこで途切れるも、今度はジッと睨みつけるような視線を送ってくる博麗に辟易しつつ椅子に座る。直様紅茶が入ったカップが目の前で湯気を立てて置かれたので、一息吐く
「……ところで、紫達の姿が見えないけど何処で悪巧みしているのかしらね? ──教えなさい、早く」
「ヤケに突っかかってくるな、何かイヤな事でも有ったか? 門前で別れて以来見てないから知らんな。咲夜は知ってるか?」
「えぇ、図書館の方へ向かわれましたわ。ご案内致しましたので間違いは有りませんわ」
「だとよ。安心したか? せっかくのパーティーなんだ、もう少し静かにしてくれ……」
チラリとレミリアを見ると、俺と博麗の仲の悪さを目の当たりにして驚いていた。向こうが勝手に勘繰って当たってくるだけなので、此方がどうこうしたのではないのだが正直傍迷惑な話だ
「と、取り敢えず……フランも喜ぶと思うわ。後で会ってくれないかしら? あの子、貴方にまた会うのを楽しみにしていたのよ」
「そりゃあ嬉しいよ。必ず会いに行くさ……魔理沙も図書館に行ったし、俺もそっちへ行くかね」
紅茶を飲み干して移動することに。レミリア達も──不本意ながら博麗もだが──一緒に行くらしいので全員で図書館へ。先頭をレミリアが進み、次に俺と咲夜が続いて最後尾を博麗が持つ。道中博麗が怪しい動きは無いかと警戒して此方を見ている、と咲夜がわざわざ教えてくれた以外は何事も無かった
「ねぇ霊夢? 貴女、彼の何処にそんなに気を張っているのかしら。彼が一体何をしたの?」
「何もしていないからこそ警戒しているの。あの紫と一緒なのよ、それだけでも十分なのに仲良くなってるだなんて……信じられないもの。気を抜くわけにはいかないわ」
流石のレミリアも、これにはやれやれといった表情を浮かべて俺を見る。互いに苦笑いとため息を零し、尚も進み続けて──ようやく図書館への扉の前に到着した
咲夜がゆっくりと扉を開けてくれたので中へと入り、変わらない本と本棚の数に懐かしさを覚える。紅魔館の地下に有る図書館は、最後に俺が見た時とちっとも変わっていなかった
──と、何やら少し離れた場所から言い争う声が聞こえてきた。何か有ったのか……?




