第六話
藍様の口調ェ……
一歩一歩、畳を踏みしめながら接近してくる妖怪。対して俺はと言うと……完全に腰を抜かしてしまっていた
あっという間に距離は縮まり、気づけば目の前まで来ていた。目つきはキツく纏う気配は一層鋭い、何か行動しようものなら間違いなく躊躇いなく手を出してきそうなほどにだ
「紫様が連れて来た、と言ったな? 貴様の様な人間を、紫様が連れて来られる筈などなかろうに……九尾たる私を前にして怖じ気ずくのも分かるがもう少しマシな嘘を──」
「はいそこまで〜」
俺と妖怪の間に先ほどのスキマが開き、ひょっこり紫が顔を出す。反射的に首根っこを引っ掴んで躊躇う事無くスキマから引き摺り出す
「い、いたたたた!? ちょ、痛いってば締まってるわよ!?」
「お前……何処行ってた? 人が死ぬかもしれない思いを味わってる間、何処に行っていたんだ?」
「えぇっと〜それは……その、ね? ついちょっとした悪戯心からって痛い痛い!」
ペシペシと軽く頭を叩く。力も然程加えていないからそんなに痛くはない筈だ、問題は……
「…………(パクパク)」
目を丸くして口を開け閉めしている妖怪。完全に呆気にとられているようだ、殺伐とした雰囲気も霧散してしまっている
「……もう! 髪に変な癖が付いたらどうしてくれるのよ!? せっかく綺麗に手入れしているというのに……藍? いつまで呆けているの、しっかりしなさい」
ぺちん、と紫が頭を一叩きするとスイッチが入った様に目を瞬かせて此方を一瞥。恐らくだが、情報を整理でもしているのだろう
「……失礼致しました、紫様。ところで、この人間は一体? 玩具としてなら少々躾が必要みたいですが……」
「失礼なのはアンタの方だろオイ。何が嬉しくて初対面のヤツに玩具呼ばれされなきゃいけないんだよ……」
「口を慎め人間が。この場で処分してもよいのだぞ? 粋がるでないわ!」
一喝。えぇ、身体の震えが止まりませんどうしましょう
「藍、彼は今日から此処で暮らす新しい同居人よ? そんな態度は許さないわ」
「え、ですが紫様……このような礼儀もへったくれもない人間を八雲邸に住まわせるというのは、この八雲藍納得がいきかねます!」
「そうだぜ八雲! なんでこんなヤツと……ってか俺此処で暮らすの決定なのか!?」
「あぁもう、二人とも黙りなさい!!!」
また一喝。今度は妖怪も震えてやがる……俺? 腰が抜けましたがなにか?
「文句は言わせないわよ……藍それに悠哉、二人は早く仲良くなって喧嘩しないように努力すること! 守れないなら……分かってるわよねぇ?」
──かくして、紫の脅しの前に俺と藍は渋々握手を交わすのであった……
お姉さん口調が原作だったんですが、何故か他の方の作品の藍様があぁいう口調で妙にしっくりとハマってしまった……
一人称とか我とか言ってたけど……どうしよう