第五十九話
紫が開いたスキマを潜り抜け懐かしの紅魔館門前に出る。相変わらずの紅さでそこに建つ館を見て、異変云々で壊れたりはしていないのにホッと一安心
「あ、いらっしゃいませ皆様方。お待ちしておりましたよ」
声をかけられ視線を動かすと、右腕と頭に包帯を巻いた美鈴が此方に歩いてきた。って何気に重傷なのか…!?
「お、おい美鈴大丈夫なのか!? その傷……いくらなんでも連中はやり過ぎだろう……!」
「いえいえ、この程度なんてことはありませんよ。私は妖怪ですからこう見えてもう既に怪我の方は治っています。ご心配には及びません」
「いやでもさ、流石に見てて痛々しいって言うか……本当に大丈夫なんだな? 美鈴が大丈夫ならそれにこした事はないんだけど」
「ええ! 実はですね……こうしてますと咲夜さんが仕事量を減らしてくれますから、少しだけですけど盛ってるんです……」
ひそひそ声で美鈴が話すも、俺の視線はその背に注がれている。先程から俺達を迎えに来たメイド長──十六夜咲夜がジッと此方を見ているのだから
どうやら紫達は先に行ったらしい。これから美鈴に行われるであろう事を想像して内心合掌しつつ美鈴に後ろを指差して現実を教えてやることに
美鈴の悲鳴と咲夜の怒号を聞きながらさて入るか〜とか考えていると、何やら黒い点が見えた。かなりのスピードが出ているのか、どんどんと近づいてくるソレはさらに速度を上げて──
「──到着ぅ、だぜぇ!」
美鈴を文字通り跳ね飛ばして着地した。黒いとんがり帽子に白いエプロン姿、その下は黒い服に極めつけは箒とまるで魔法使いの様にも見える。何事もなかったかのように箒をクルクルと回しながら咲夜に話しかけていた
「お、咲夜! 約束通りにちゃーんと来たぜ? 最後に何か跳ね飛ばした気がするけどな!」
「それなら問題無いわ。丁度お仕置き代わりにもなった事だし……改めて、ようこそ紅魔館へ」
「おう! ……で、アイツは誰だぜ? さっきから私の事を見てるんだけど」
無遠慮に見過ぎたか。兎も角咲夜の所へ向かうと、咲夜は恭しく一礼をしもう一人の少女は笑顔を浮かべて手を差し出していた
「初めまして、だよな? 私は霧雨魔理沙だぜ、よろしくな!」
「あぁ初めまして、数藤悠哉だ。まぁ気軽に悠哉とでも呼んでくれ、えぇっと霧雨?」
「魔理沙でいいぜ、その代わり私も悠哉って呼ばせてもらうからな! ところで悠哉は一体何の用事で紅魔館に? 正装してるからパーティーには出るんだろうけど」
「今正解言ったぞ? まぁどちらかと言えば俺は付き添いかな。他は先に行ってしまったし」
「えぇ、八雲様ならば先にお通し致しましたわ悠哉様。ようこそ紅魔館へ、お嬢様の元へご案内致しますわ」
「え!? お前あの八雲紫達の付き添いなのか!? 人は見かけによらないってまさにこの事だぜ……」
別段驚く事でもないだろうに……なんて思いながら、俺と魔理沙は咲夜の案内の下紅魔館へと入って行った……
──余談だが、魔理沙に跳ね飛ばされた美鈴はこの事が原因で本当に怪我が増えたんだとか。少し可哀想にも思えるが、自業自得か……




