第五十五話
「──で、取り敢えず妖夢の一件はこれで良しとしてだ。次は幽々子か……さっきサポートとかアドバイスとか言ってたけど、具体的には何をどうしてくれるんだ?」
「そうねぇ……サポートは仮に貴方が誰かの手を借りたくなったまたは借らざるを得なくなった際に、紫や藍以外で手助けを出来る相手の一人として考えてくれればいいわ〜。アドバイスは例えばこの幻想郷で橋渡しをしてほしい人が出来たとか、この人と話す時はどうすれば良いかとか……そういった事を教えてあげる程度と思って頂戴な」
「結構幅広いな……でも本当に良いのか? くどいようだが、嫌なら別に無理しなくても──」
続けようとする俺の口元に人差し指を持ってきて黙らせる幽々子。大丈夫とばかりに笑ってみせるので、もうこの事は本人の中では片付いているのだろう
妖夢が改めて淹れてくれたお茶を飲み、お茶菓子に出された煎餅を一つかじる。さて、これで全て片付いたわけだが……これからどうするかな
「そうそう……紫がね、もう大丈夫だろうからもう一泊して行きなさいって言ってたわよ〜? どうするの悠哉、もう一泊……する?」
「あの……私が言うのもなんですが、出来ればもう一泊して頂いてちゃんと白玉楼の素晴らしさを知ってほしいのです! ……ダメでしょうか?」
二人に上目遣いで迫られ、さり気なく幽々子は蝶を妖夢は刀を取り出してきているこの状況で断れる筈もなく……結局もう一泊が決定した
「では、早速夕飯の支度をしてきますね! 楽しみに待っていて下さいね!」
言うが早いか走って台所へと言ってしまった妖夢。幽々子も何処となく嬉しそうに見えるが……まぁ暗いままよりは良いか
「ねぇ悠哉、貴方……好きな女性のタイプって有る?」
「んだよ藪から棒に……そりゃあ有るよ? なんて言うかこう……落ち着いていて一緒に居ると安心出来る雰囲気の有る人かな。向こうでは基本的に一人だったし、こうやって色んな人と話したりするのも中々無かったからなぁ……その影響か女性もそういう人が好きかな」
「そう……紫はタイプなの?」
「やけに突っ込むねぇ……今の所、紫をそういう風にはあんまり見てはいないかな。確かに魅力的な女性だとは常々思うけど、俺とじゃ色々と違い過ぎるから……」
カラカラと乾いた感じの笑いが出て来る。紫の親友にこんな事言えば、間違い無く本人にも伝わるだろうに……一体俺はどうしたんだ?
「と、兎も角だ! この話はこれでお終い! 紫本人にも決して言わないでくれよ? ……ちょっとお手洗いに行ってくる」
場所を幽々子から聞いて立ち去った後、一人になった幽々子の横の空間が開き──幾分顔を赤くした紫が現れる。どうやら先程の会話をスキマを通じて聞いていた様である
「良かったわねぇ紫、彼にそんな風に見てもらえていて……羨ましいわぁ。私もチャレンジしてみようかしら〜」
「幽々子なら落とせるんじゃない? じゃなくて! え、なに幽々子……もしかして貴女も……?」
「あら、私がそういう事を言うと可笑しいかしら〜? 私だって亡霊である前に一人の女性よ〜構わないでしょう?」
ため息を吐く紫とは対照的にふふふと笑う幽々子。でも、互いに握手をする辺りは流石親友と豪語するだけはある様である。はてさて今後どうなる事やら……
「──!? なんだ? 今、確かに悪寒みたいなのが奔ったような……気のせいか?」




