第五十四話
「──で、二人には着いて来てもらったわけだが……本当にあの決定で良かったのか? 今からでも遅くはないし、三人掛かりで抗議すればまだなんとか……」
取り敢えず幽々子と妖夢の二人に話をしているが、反応は鈍いままだ。幽々子は困った顔で受け入れているし、妖夢に至っては一言も話さないのだからどうにもこうにもしようがない
「──あぁもう分かった! ならば勝手にさせてもらうけど構わないな? 今更ノーと言っても聞かないぞ!」
これまた黙ったままコクリと頷くだけの二人。仕方が無いので今後についてどうするか……幽々子はなんとかなるが問題は妖夢の方だ。なんでも言う事を聞く、だなんて……一体何を言えば納得してくれるんだか……試しに適当に言ってみたのだけど、まさかの却下されてしまった
「妖夢、改めて……一つ聞いてもらうぞ。これには一切拒否も却下も拒絶も許さないからな」
「…………はい、どうぞ」
「よし。ならば妖夢、俺と──友達になってくれないか?」
「………………はい?」
惚けた表情の妖夢と呆れ顔の幽々子。しょうがないだろう、それくらいしか思いつかなかったんだし……
と、不意に妖夢が笑い出し始めた。最初はクスクスと、そしてあははははと大声で。呼吸を整えながら顔を上げると、目尻には涙が溜まっている
「貴方はバカですか? 命を狙って来た相手と友達になりたいだなんて……正気とは到底思えませんよ」
「うっせぇ、お前にだけは言われたくないよ。そのセリフ、そっくりそのままお返しさせてもらうわ……でもまぁやっと笑ったな」
「余計なお世話ですよ……でもありがとうございます」
静かに頭を下げる妖夢。やがて、先程とは打って変わって落ち着いた雰囲気で立ち上がると一礼して部屋を出て行った……
「あの娘の事だから、お茶を淹れにいったのね……とびきり美味しいのがくると思うから楽しみね。それより悠哉……あの娘の処分、貴方なりに色々考えてくれたのでしょう? ……ありがとう」
「なんでもってのはあんまし好きじゃないんだよねぇ……それに、紫の事だから俺がこうやってするのもお見通しだと思うし。それを見越してあぁ言ったんだと、俺は考えてるからな」
「……紫が好きなのも頷けるわね。私も……」
「ん? 何か言ったか幽々子? すまんがよく聞こえなかったから、もう一度……」
「なっなんでもないの! 聞こえていなかったならいいから!」
……釈然としないが、まぁいいだろう。と、妖夢がお盆に湯のみとお茶菓子を持って帰ってきた。受け取って一口──丁度良い熱さと濃さで美味い
「ありがとう妖夢。熱さも丁度良いし、美味いよ」
「ありがとうございます悠哉様。その……本当に私なんかと友達でよろしいのでしょうか?」
「あぁ。それとも何か? 自分よりも格下とじゃあ友達は嫌か?」
「い、いえ! ……ありがとうございます」
一先ずは妖夢の一件も片付いたことだし、一服してから幽々子の事も決めるか……




