第四十七話
翌朝。昨日決まった当番である薪割りをするため早速庭の一角に向かうと、先に居た幽霊が此方に気づき恐らくお辞儀をしてくれた
といっても、ふよふよと浮いている全体からおおよそ上半身が軽く曲がった程度だが……手を挙げて返し斧を片手に積み上げられた薪を一つ取って割る
八雲邸で或る程度はこなしてきたのでサクサクと割り続け、綺麗に並べて揃えていく。幽霊もどう持っているのかは分からないが手伝ってくれ、あっという間に必要分が揃う
礼を言って台所まで籠に入れて持ち運び、かまどの前に下ろすところで妖夢がやって来た
「あ、おはようごさいます悠哉様。随分と手慣れたご様子でしたが、紫様の元でもされていたのですか? この切り口……昨日今日ではここまで綺麗にはいきませんが」
「ん、まぁな。紫のトコで世話になってる間は俺がな。藍や紫がやる方が速いし数も直ぐ揃うけど、鍛錬代わりと色々してくれる恩返しって感じでやってたんだ」
「そうでしたか……では早速此方の薪で朝ご飯の支度といきましょうか。出来ましたらお呼びしますから、悠哉様はゆるりと休まれて下さい」
ありがとうと返して洗面所で手を洗い、充てがわれた部屋へ向かう。紫が渡してくれた、霊力を上手く巧みに操る方法を記した本を読み時間を潰すことしばし──妖夢がわざわざ呼びにやって来てくれたので居間へ
先に座って待っていた幽々子に挨拶をして妖夢が来るのを待ち、三人揃ったところでいただきますと言って朝食をとる
「──美味いなこの味噌汁。味噌の味がしっかり出ているし、何より豆腐が丁度いい熱さで食べ易い。焼き魚は……ん、脂が乗っててコイツも美味い、この魚って鰤だよな? よく手に入ったな……幻想郷には海が無いからよくて川魚くらいだって聞いてたんだけど?」
「ありがとうございます。魚でしたら、紫様がスキマを開いて持って来てくださるのですよ。そのおかげでこうして、本来なら手に入らない新鮮な魚を食べる事が出来るのです──あ幽々子様、お代わりは如何致しましょうか?」
「えぇ貰うわ〜。そんなわけだから、私達は紫に頭が上がらないのよぉ。なんて言ったって食事は生きている上で大切でしょう? まぁ私は死んでいてあんまり食べる必要はないのだけれど〜」
その割にはかなりのペースで食べ続ける幽々子。妖夢は忙しなく動いてやれお代わりだのやれお茶だの……見ていて疲れないのか不思議である
「ま、いっか……妖夢? 忙しいところ悪いが、明日の昼間辺りで時間有るか? 良ければ稽古の相手をしてもらいたいんだが」
「構いませんよ。楽しみにしていますから──頑張って下さいね、悠哉様……?」
──忘れかけていたが、今の妖夢を見て改めて思う。コイツ絶対……俺を何かしらの理由で斬りつけてくるだろうと……
その後の俺は明日の昼間辺りに繰り広げられるであろう稽古の事を考え、悪寒が止まらなかったのは言うまでもない。厄介過ぎる事を引き受けてしまったなぁ、と悩むも時既に遅しである
彼ですが、霊力符や簡易スキマ用の符なんかは所持していますが剣術なんてからっきしです
相手はあの妖夢ですが……ん〜展開が難しそうだなぁ。一方的にヤられるのもアリだけども




