第四十五話
「悠哉、あそこに見えるモノが──桜花結界よ」
しばらく飛び続けていると、幽々子が空の一点を指してきた。その先には薄っすらとだが巨大な結界が、まるで現世と冥界を隔てる境界の様に浮かび上がっていた
「随分とまぁデカくて儚げな結界だな。効果はバッチリなんだろうけど……で、どうやって結界を越えて冥界へ行くんだ? 何かしらの手段は有るんだろ?」
「えぇ勿論。簡単よ〜、ただ真っ直ぐに進むだけ……それだけで越えることが出来るのよ〜」
それって結界の意味が無い様な気もするが、なんでも紫が結界の修復を怠っているらしくそのせいで自由に出入りが可能なんだとか。まぁそれでも、幽霊やら何やらは出られない様にしている辺りは流石結界というか……
「んじゃま、早速越えて冥界へ行きますかね……幽々子は引き続き案内頼むな?」
「任せて頂戴な〜? ……あら、でも私が案内をする必要が無くなったわよ〜? ほら、あそこ」
ちょっと行った先に見覚えのあるヤツが一人──そう、白玉楼の庭師こと魂魄妖夢である。紫が話していた辻斬りの気の再発云々が頭をよぎり、自然と警戒しながら近づくと……満面の笑顔で出迎えてくれた
「お帰りなさいませ幽々子様、そしてお久しぶりでございます悠哉様。先日はとんだご無礼を……」
「え……あ、いやまぁ……別に何処かを怪我したとか無かったし気にするな。それより此処で待っていたってことは、この先は魂魄が案内を?」
「勿論でございます、ささ……それから私の事は妖夢と呼び捨てで構いませんから、遠慮なくお呼びください」
圧倒される俺と惚けてしまった幽々子を尻目にくるりと背を向けて結界へと近づく妖夢。何がどうなってしまったのかさっぱりではあるが、俺には行くしかないのだ
「取り敢えず幽々子、行くか……」
「えぇ。でもくれぐれも気をつけてね〜、あんな妖夢は──見た事が無いわ」
幽々子から間延びした口調が消えてしまう程の出来事らしい。この先起こるであろう問題事に、早くも頭を悩ませる俺だった……




