第四十三話
「あむ……ん、この後話が有るから私の部屋に来て頂戴。貴方を体力面で鍛えてくれる所を見つけたのよ」
朝食を食べていると、紫が唐突に一言。俺はもちろん藍もポカンとした表情を浮かべているので、藍にも伝えていない内容の様だ
兎も角、話が有る以上聞かない訳にはいかないのでさっさと食べ終えて紫が待つ自室へ向かうことに。何処か一抹の不安を胸に抱きながら歩き、部屋へ入る
──何故か傍らに、先日客人として訪れた西行寺幽々子が座っている。恐らく紫が呼んだのだろう、と一人納得して言われるがままに座布団に座る。やや間が有って紫が話しだす
「今日来てもらったのは他でもない、横に居る幽々子のお願いなのだけれど修行の名目で白玉楼へ行ってほしいの。ほら、何時ぞや貴方に話したでしょう? 白玉楼という冥界に有る場所の事、覚えているかしら?」
「……あぁ、まぁな。にしてもまさか幽々子が住んでるのが白玉楼だったとはな……それで修行に行くとして、名目云々って言ってるからにはソレだけじゃあないんだろ? 今度は何をしてくればいいんだ?」
「察しがいいわね。先日の貴方との一件で魂魄妖夢に辻斬りの気が再発したらしいのよ、それで貴方に一度ボコボコにしてほしいと幽々子直々にお願いされたのよ」
ボコボコったって……言葉に困る。先日はどう見ても俺の方がボコボコにされた筈だ、なのに今度は俺がボコボコにしてこいだと……
固まる俺を見て幽々子が少し困った様に紫を小突くと紫もコホンと一つ咳払い、ハッとする俺。微妙な空気が流れる中、ため息を吐いて続きを促す
「もちろん、タダでとは言わないわ〜。私も貴方の幻想郷での生活を応援するし、貴方が困った時には手を貸すわ〜」
「……俺、今度こそ死ぬかもな。ま、いざって時は紫に出張ってきてもらうとしてだ。つまり妖夢を一度ボコボコにするついでに体力面を鍛えてこいと、そのために白玉楼へ行ってこいと。そういう訳だな?」
「えぇ。まぁ詳しい事は幽々子に聞きなさいな、彼女が向こうでは色々とお世話をしてくれる手筈だから。くれぐれも変なコトはしないように、事を終える前に切り刻まれるわよ?」
「変なコトって……信用してくれよちっとはさ。幽々子も俺がその……そういう事をする輩に見えるのか?」
「ん〜そうねぇ、見えないとは言えないわ〜貴方男の子だし〜。でもまぁ大丈夫じゃないかしら〜?」
相変わらずのんびりとした雰囲気で話す幽々子。掴み所がないというか、自由なヤツというか……兎も角俺の次の幻想郷での活動場所は白玉楼に決まった




