第四話
「だ、大丈夫!?」
手を貸してもらってようやく椅子に座れた俺に、八雲が最初に口にした言葉は心配の言葉だった。軽く手を挙げて返したが、その手が震えていたのを見て八雲は顔を俯かせた
「ごめんなさい。まさかここまでとは思ってなくて……まだ痛む?」
「……いや、大丈夫……。少しふらふらするが、もう……大丈夫だ」
深呼吸をして気分を落ち着かせる。……よし、だいぶ視界も安定してきた
「どうやら、八雲の言葉を信じなきゃならないみたいだな。悪かったな、疑ったりして」
「い、いいのよ? きちんと説明しなかった私が悪いんだから……」
気まずい空気がお互いに流れる。このままでは埒があかないと判断し、俺は意を決して口を開いた
「なぁ八雲、俺は……人間じゃないのか?」
ビクッ、と肩が反応し遅れて視線が合う。だが、八雲の目は違うと物語っていた
「正確に言えば、貴方は人間で在りながら能力を持っているの。本来なら忘れ去られた筈の能力をね……だから今、世界から拒絶されつつあるの」
「能力ね……まるでファンタジーだな。アレか、魔法でも使えるのか?」
「能力と言っても様々よ。そうねぇ……貴方が言った魔法も有れば、時間を操るなんてのも有ったわよ」
「……マジかよ、完全に御伽の中の話じゃねぇかよ。つまり、そんな能力が俺にも有ると?」
コクリ、と頷く八雲。幸か不幸か能力は此処では判断がつかないらしいので自分がどんな能力を持っているのかは不明だが……
ふと何気無く八雲の後ろを見た時、視線が釘付けになった。何も無い空間に亀裂が生じ、次いで空間が縦横に裂けギョロリと目玉が睨みつけてきたのだ
「コレはスキマよ。私の能力の一端ね……えっと、本題を続けても?」
頷いて先を促す。それを見てから、八雲が話を続ける。なんでも世界から忘れられ拒絶されたモノが集う場所が有るらしく、彼女はそこで管理者をやっているというのだ
幻想郷──それが、八雲が口にしたその場所の名前だ。俺の元に来たのも、たまたまスキマで見つけて保護するためだったからとか
もう少しマシな登場の仕方が有るだろうに──そう言ったら、分かりやすく視線を逸らされた。それでいいのか……
「ともかく、私としては貴方を幻想郷へ招待したいの。貴方もこのまま消えるのは嫌でしょう?」
「まぁな、確かに消えるのは嫌だな。だがその幻想郷だっけ? そこは安全な場所なのか? 着いた途端、他の妖怪なんかに喰われてオシマイとかやだぜ?」
「安心なさい。この八雲紫がバックアップに付いてあげるわ!」
正直、イマイチピンとこないが……その意味と凄さを、良い意味でも悪い意味でも俺は文字通り身を以て体感する事になる
次回、ようやく幻想入り出来るぜ!
ふと考えた事。もしも実際に八雲紫がバックアップに付いてくれたなら……
或る程度どころか殆どいけそうな気が……勿論普通に暮らす範囲では、ですが