第三十二話
「よぉフランドール、こうして会話するのも何度目か……散々人を玩具だのなんだの言ってくれたなぁ……?」
「な、なによお前……たかが玩具のくせに私に意見するの? お前なんかいつでも壊せるのよ」
ニヤリと口元を歪めるフランドールだが、その表情の裏には確かな恐怖心が見える。そしてそれだけでなく、もう一つ別の感情も……
飛び込んでくる弾幕を悉く藍が叩き落とす。口元には笑み、まだまだ余裕のようだ。少し向こうでは紫がスキマを操って弾幕をいなしながら、俺へと向かう弾幕を飲み込んでいく。スキマ、便利過ぎるだろ……
フランドールが浮かべた二つの表情──そこから確証を得るためにも、もう一歩踏み込む事にしようか。バッドエンドなんか誰も望んでいないのだから……
「やれるものならな。だがお前はしない、いや出来ないと言った方がいいかもな。そうだろフランドール? だってお前自身はもう壊し飽きた……違うか? お前自身はもう止めたい終わりにしたい、だがソレをお前は許しはしない……だから分からなくなって怖くなって周りに当たり散らす」
「な……何が言いたいのよ! 今にも死にそうな貧弱で脆弱な沢山いる人間の一人に過ぎないくせに! 495年という永い年月をずっと一人で生きてきた私の何が分かると言うのよ!」
一度口から零れ落ちた言葉は止まらない。彼女は──フランドールはそのまま己の激情に身を任せて話を続ける
「今の今までお姉様には邪険に扱われて妹として見てもらえなくて! パチュリーには魔法で閉じ込められて! 咲夜は私と会う度に恐怖と侮蔑の篭った目で見てきて! 美鈴だって内心では私を怖がっていた! 玩具としてやって来た他の人間達ですら私を腫れ物を扱うようにして距離を取ろうとしていた! 私には……私には何かを話すことの出来るヒトなんて居なかった! お前みたいに信頼出来る相手なんか居ない! お前なんかに……お前なんかに私の気持ちが分かってたまるものかぁ!!!」
言葉を吐き終わると同時に大玉が発射され、寸分違わずに俺へと殺到する。だが、今の俺にはそれ等は回避可能だしなによりも八雲という心強い援軍が居るのだ
紫と藍が弾幕を相殺し終え何も気にする必要のなくなった俺は、更に言葉を紡ぐ。もっともっと、フランドール自身の言葉や感情を引き出すために
「はっきり言っておくが、俺はお前の過去にも現在にも未来にも関心は無いし分かりたいとも思わないぞ。何処かで交わるのならその時その時で行動し、離れたならそこでお終いって風にな。だが……お前の周りはそういう訳にはいかないだろうなぁ」
チラリと意味あり気に視線をズラす。つられて興奮しているフランドールも視線を動かし──後ろで待機していた彼女達と目が合う。最早誰の事かなどと無粋な事は言うまい
「お前が駄々こねるも良し、一歩踏み出して外を見るも良しだ。少なくとも──今のお前にはその権利が有るし、実際に行動することも可能だ。さて、どうするフランドール? 一歩踏み出すことに恐怖を抱いて元の孤独な暗がりへと戻るか……それとも勇気を振り絞って皆が待っている明るい外へと出るか。他の誰がなんと言おうが構いやしない、全てはお前自身で決めろ」
瞳を驚きに見開いた状態で固まるフランドールへ、俺が言える言葉は全て言った筈だ。舌足らずだし言いたい事がはっきり言えているかも分からないが、恐らく伝えたい事は伝えられた筈だ。後は──当人達次第だろう
色々とわだかまりは有るだろう。少なくとも彼女達の歩んできた人生分の恨み辛みも有るだろうし、話し合いだけでは収まらないかもしれない。弾幕ごっこで飽き足らず、下手をすれば本気で肉親同士殺しあうかもしれない
「……大丈夫よ悠哉、きっと大丈夫。私には運命なんて大層なモノは見えないけれど……彼女達ならば、必ず乗り越えられるわ。ねぇ藍?」
「はい、今はギクシャクした関係を引きずっているから難しいかもしれませんが……肉親同士ましてや同じ館に住む住人同士なら大丈夫かと」
「だ、そうよ悠哉? だから心配する必要は無いわ。さて……私達部外者はそろそろ退散しましょうかしら。貴方の怪我もきちんと治療しないといけないものね……フフフ」
不気味に笑う紫と、やれやれといった具合に肩を竦める藍。どうやらこの後、ある意味一番大変な事が起こりそうだ……
こんな感じで締めてみましたが……うーん
ハッピーエンドにしていきたいが、パパッとやってしまうと感動や面白味が無い……のだけど、果たしてこれで良かったものか……
──まぁ紅魔館はもうちょっとだけ続きます。後日談(?)的なモノで




