第三十一話
「一度壊れた玩具には興味なんて無いの! さっさと……壊れちゃえ!」
目の前一杯に広がる彩り鮮やかな弾幕の数々を、痛む身体を無理矢理に捻って回避していく。己の身を弾幕に掠らせるようにして避けるグレイズという回避方法を最大限活用して、致命傷になりそうなモノを避け続ける
「紫は左から、藍は右から弾幕で挟み撃ちをしてくれ! 真ん中は俺がなんとかする!」
「なんとかって……その身体では無茶よ! 藍を付けるから、二人で行動を──」
「ッ!? 紫様、来ますッ!」
直後、紫を飲み込まんと大量の弾幕が乱れ飛ぶ。姿が見えなくなったのでもしや……と考えてしまったが、すぐ隣に見慣れたスキマが展開され無傷の紫が顔を出す
「心配するな、俺は大丈夫だ。紫……頼むぜ?」
「貴方って人は……分かったわ。但し、事が終わったら覚悟してもらうわよ? それに、貴方が掴みかけている事も全部話してもらうわよ」
「……敵わないな。分かった、絶対に死なないと約束するから」
──スペルカードの素を取り出し掲げる。即席で即興とはいえ、使える手は何でも使う。でなければ……負けるのは俺自身なのだから
「……見せてやるよフランドール、これが俺のスペルカードだッ!」
──道符「迷える者への道標」──
スペルカードが光り輝き発動したのを確認する。恐らく対象に入っていない人からは不発としか見えないだろう。だが、スペルカードは確かにその効力を発揮している
「これ……まさか悠哉、弾幕の動きや安全地帯が見えるようになるスペルカードなの? まるで手に取る様に、彼女の弾幕が見えるわ」
「これなら……行けますね。支援はお任せを、必ず成功させてみせます」
──そこからは圧巻の一言に尽きる。元の身体能力の高い二人が、弾幕の道筋や隙間がはっきりと分かるようになってしまったら……最早掠らせる事すら不可能になっている
物理攻撃には発動しないのと、使用者である俺から距離を取り過ぎる──つまり離れ過ぎると効力が薄れていくデメリットがあるものの、ソレを差し引いても十分メリットがある
……後は、体力勝負か。俺がくたばる前に、感じた疑問を探り出さなければ無理矢理前線復帰した意味が無くなってしまう
一歩一歩確実に迫り来る弾幕を回避しつつフランドールへと歩み寄る。どうしても身体が動かず避けられない弾幕は二人が相殺してくれるので、ひたすら歩き続け──フランドールまで後少しの所まで辿り着いた
当のフランドール本人は、いくら弾幕を撃っても全く当たらない俺達に恐怖心でも感じたのか顔を引きつらせている。話すのならば今しかない!
意を決して、俺は未だ弾幕を撃ち続けるフランドールに話しかける……
時間との勝負、ですね
スペルカードが切れても負け、体力が尽きても負け、紫達が悠哉に迫り来る弾幕を捌き切れなくなっても負けという……
まぁ出来ればハッピーエンドの方向で締めたいですねぇ