第三十話
「……怪我、大丈夫そうだな。よし、行くか……」
「あ、あのねぇ……! 貴方、今の自分の状態が理解出来ているのかしら……! そんなに死にたいのなら何処か他所でやって頂戴ッ!」
……おう、物凄い剣幕でレミリアに怒鳴られた。まぁ仕方ない、今の今まで瀕死だったヤツが応急手当をした程度で復帰するとぬかしたのだから
だが、行かなくてはならない。先ずは紫達を止めなければ、この館もフランドールも無事では済まないだろう。だから、打算的な意味合いで恩を売るのも悪くないだろう
──と、フラつく身体を立て直しながら酷く冷静に回転する頭で此処まで考える。正直言って俺らしくない……が、恩は売っておいて損は無い筈だ
「っととと」
「お気をつけ下さい悠哉様。御身は未だ全快には程遠いのですから……」
それとなく咲夜が支えてくれたのでぶっ倒れずに持ち直す。チラリ、とレミリアを横目で見ると……若干涙目で心配そうに俺を見ている
「……咲夜、レミリアに伝言を頼む。その……治療をありがとう、無茶をするが心配はするなと」
「畏まりました。お帰りをお嬢様共々お待ちしておりますわ……」
咲夜から離れて一気に地面を蹴る。同時に威力の低いレーザー弾幕を配置して煙がもうもうと昇る辺りに叩き込む。威力は抑えてあるので万が一紫達に当たっても大丈夫だろう
「──悠哉!? 貴方、何故……!?」
「なんとか、ケリが着く前に止められたか……紫! 話は後だ、手を貸してくれ。藍も頼めるか?」
あんまり派手に動けない以上、二人に頼らなければこの場を乗り切ることは出来ない。それになにより……一連の出来事を実際に己の身体で感じて生まれた疑問、それを解消する必要が出来た
「さて、フランドール・スカーレット……待たせたな。人をあの世まで吹っ飛ばしてくれやがって……覚悟しろよ」
「……なんで壊した筈の玩具が居るのか不思議だけど、まぁいいや。また、壊してあげるよ……!」
迫り来る弾幕の嵐を前に、不思議と口元が歪む。さっきまで恐怖しか感じなかったソレを、今は楽しめるようになっている。紫達が側に居るおかげなのか、はたまた一度あの世に足を突っ込みかけたからなのか……
「どちらにせよ、今なら行ける……! さぁ、来い! フランドール・スカーレット!」




