第三話
まだ幻想入りならず。もう少し、必要か……
「……で? 話を戻すが、アンタは一体何者だ? どう見てもそこらの人間には見えないが……」
「そうね、その辺の人間なんかと一緒にされちゃ敵わないわ。ってだから、無言で通報しようとしないで!? 私結構真面目に言ってるのよ!?」
無性に腹が立ったからやった、後悔はしていない。ともかく……先ずはコイツをどうするか決めなければいけない訳だが
「アンタ、名前は? そろそろアンタって呼ぶのも疲れた」
「つ、疲れたって貴方ねぇ……まぁいいわ。私は八雲紫、こう見えて妖怪よ」
えっへん、と威張る様に大きな胸を張る女性──八雲紫だったか。内心痛い人を見る心境になるが、そこは我慢
「……悠哉、数藤悠哉だ。見ての通り人間だがな」
「ふぅん……人間、ねぇ……」
何やら意味あり気な視線を送ってくる八雲。まるで俺が人間じゃないとでも言いたげだ
そんな俺の気持ちが表情として出ていたのか、ニタリと笑みを浮かべる八雲。正直……気持ち悪かった
「では数藤悠哉、そろそろ本題に入りたいんだけど構わないかしら? 私もあまり此方側には居られないのよ」
「……いいぜ。で、本題って?」
「単刀直入に言うわ。貴方は──この世界に居るべき人間ではない」
──いきなり何を言い出すのかと思えば……俺が居るべきじゃないとか言い出しはじめた。はっきり言って意味が分からない
「やっぱり自覚してなかったみたいね……なら、貴方に本当の意味での現実を見せてあげるわ」
言うや否や、片手を横に滑らせる。同時に身体に顕れる違和感、そして──唐突に訪れる激痛
「……っ!? ぐぁあああああ!?」
頭痛腹痛鈍痛どれともとれない痛みが全身を駆け回り、最早立ってもいられず膝から崩れ落ちる。方向感覚が麻痺したのか上下左右が分からなくなり、視界はぼやけ聴覚は使い物にならない
と、急に奔った激痛は同じ様に急に消えていった。涙で歪む視界を必死に上に上げると、心配そうな表情を浮かべた八雲が俺を見ていた
人物像と言いますか、口調立ち位置立ち振る舞いに雰囲気と……なかなかに難しいですねぇ
悠哉君に突如訪れた激痛。アレは世界から忘れ去られ拒絶されつつあるがために起こった現象、と捉えてもらえれば幸いです
だって、ねぇ? 幻想入りって事は世界から忘れ去られる事によって出来るんですから、平然とポンと行けるのはなんだかなぁ〜と勝手に想像してたらこうなりました