第二十七話
あまりにも呆気ない出来事に、私──八雲藍はその場に立ち尽くしていた
フランドール・スカーレットの声が煙の中から発せられ、スキマから手を伸ばす紫様とほぼ同時に私自身も駆け寄りながら懸命に手を伸ばし……
その目の前で血の池に沈む悠哉が崩れ落ちる音を、光景を見せつけられた
──どうして? 何故こうも簡単に? 何故だ、何故だ何故だ何故だ何故だ何故だっ!?──
頭の中でグルグルと同じ言葉が延々と回り続けて私から余裕と冷静さを奪っていく。右手の裾に紫様から渡されたいざという時の結界符、ソレを使えば拘束出来るというのに……今の私にはそこまで頭が回らない
同じ様に吸血鬼もその従者も、ピクリとも身体を動かさずただただ彼へと視線を向けるだけ。向こうも私と同じく理解が追いついていないのが手に取る様に分かってしまう
紫様もスキマの中から目を見開いた状態で呆然とされている。何だと言うのだ、こんなにも呆気ない幕引きだなんて──
「……あはは、あははひひはははははぁ!」
──憎い、紫様の好奇心を満たしていたあの男を殺したアイツが。今この時も心底楽しそうに嗤っているあの小娘が、腑が煮え繰り返りそうになるほど憎い
「…………てやる…………」
紫様が何かを呟き──同時に流れ込んでくる、紫様のドス黒い感情の数々。賢者であり幻想郷を見守る立場でもある紫様が、こんなにも取り乱すなど……嗚呼そうか……やはり紫様はあの男の事を……
ならば式神として、主から大切なモノを奪ったアイツに目にモノを見せつける必要が有る。嫌と言う程に、トラウマと化す程に……心の奥底血液の一滴に至るまで──
「──殺してやるうううぅぅぅぅぅ!!!」
──徹底的に、屈辱的に、圧倒的に叩き込んでやろう。我が主とこの身に宿る、この黒い感情を……!
ゆかりん及びらんしゃま──覚醒
誰だって想い人を目の前でヤられちゃあ正気じゃ居られませんよねぇ(らんしゃまは別ですが)
式神としてその場に居る→ならば、術者の感情なんかも術式を通して共有影響するんじゃないのか?
と色々妄想を膨らませてみた結果……こんな感じに仕上がりました(汗




