第二十六話
油断は禁物、ですね
──お姉様に、私が倒せるのかなぁ──
頭上から声が降ってきたと思った次の瞬間、部屋全体に濃密なへばりつくような殺気が一気に満ちる
「……来たか、フランドール」
頭を上げて、天井からぶら下がるフランドールを睨みつける。そんな俺を、彼女は心底楽しそうに笑って見返してきた
「お姉様も咲夜も居る、狐さんも居るし新しい玩具も居る! 楽しめそうだなぁ……誰から遊ぼうかなぁ……」
人差し指を伸ばして、まるで品定めでもするかの様に振り始める。油断は出来ない、目を離してしまえば壊されるかもしれないからだ
「……ねぇそこの玩具──じゃなかったお兄さん。なんでそんなに私を睨むの? 私まだ何もしていないよ?」
「よくもんな事言えたな。初対面で人の事ぶっ飛ばしやがったくせに……おまけに藍まで投げやがって!」
「怖いよ怖いよお兄さん、落ち着いて話そうよ〜。じゃないとさぁ──」
──壊しちゃうよ? それでもいいの?──
浮かべた笑みの裏側に確かに潜む狂気を垣間見た瞬間だった。と同時にレミリアと咲夜が地を蹴り藍が札を展開していた
先ずレミリアが大きな赤く光る槍を寸分違わずに投擲し、続いて咲夜が周囲一帯に銀製のナイフを隙間無く配置し押し潰し最後に藍が結界を発動させて──ソレごと弾幕で飲み込む
傍から見てもオーバーキルにしか思えない、一切の手加減を無くした一撃一撃。だがそれでも──どうやら吸血鬼を倒すには足りない様だ
立ち昇る煙の中からシルエットが浮かび上がり、大きな声で狂った様に笑い出すフランドール。出てきた彼女の身体に傷は見当たらず、精々衣服が少々破れた程度
「……化け物かよ、お前は」
「あ〜ひっどい! 人の事化け物呼ばわりだなんて……そんな事言っちゃう玩具は──こうだっ!」
途端、視界一杯に色とりどりの弾幕が配置され一気に俺に向かって来る。ソレらを上手く躱しつつ能力を発動させる
「今度は……こっちの番だ! これでも喰らえ!」
お返しとばかりに細く薄く縦に伸ばした弾を数回に分けて発射する。回避回避ときて、丁度額の辺りに命中するのを見て内心喜ぶ
──思えば、この時の俺は紫やレミリア達の忠告を完全に忘れてしまっていた。もっと冷静になればすぐにでも分かった筈なのに……
いくら訓練を積んだとは言え人間しかも所謂妖怪退治屋でもなんでもない素人の放つ弾が、こんな簡単に当たるなんてあり得ない
「……キュッとして……」
声が聞こえ顏一杯に狂気の笑みを貼り付けたフランドールを見た時には、既に遅かった。ゆっくりと進む時の中、俺はスキマから手を伸ばす顔面蒼白の紫と此方に走り寄る焦り顏の藍の二人を視界に収めて──
──ドッカーン──
直後、意識を手放した……
まだ死なせませんよ、まだね
うーん、もう少しまとめたかったけれど……難しいですね
誤字脱字あれば、是非指摘の方よろしくお願い致します




