第二十三話
「なぁパチュリー、何か手はないのか? このままじゃ間違いなく、次に会った時に俺はあの世行き決定だ……」
「……なくはないけど、人の限界を超えてしまうから無理ね。いくらなんでも、相手が能力を発動させて核を握り潰される前に核を移動させて逃れるとか、そもそも能力の判定外に核を持ち出すとか出来ないでしょう?」
「……無理、だよな絶対。もしかしなくても詰んでるのかよ……」
ガックリ項垂れる俺と、隣で複雑そうに見てくる藍。彼女とて例外ではない筈だが、その辺りは紫の式神である以上なんらかの方法が使えるのだろう
その点、俺は紫の式神ではないし藍程の力を持っているわけでもない。ましてや、パチュリーの様に魔力が有って魔法が扱えるわけでもない
今の俺は完全に、フランドールの手から逃れる術がない謂わば丸裸の状態だ。恐らく向こうは壊す気マンマンで来るだろうから、マズイのだが……
「そうねぇ……そうだ、スキマ妖怪の力を借りるのはどう? 直接手が出せなくても、間接的なサポートなら大丈夫だと思うけれど」
「間接的、か……一応聞いてみるか。紫? 居るか?」
やや間が有って、見慣れたスキマが展開される。そしてスキマがパックリと開き、紫が顔を覗かせる
「少しスキマが不安定だけど此処に居るわ。無事魔女と合流出来たみたいでなによりね、それより面倒なのに目をつけられたわね悠哉……」
「あぁ全くだ、ホント災難だよ……ところで紫に聞きたいんだけどさ? サポートってどの辺りまでなら行えるんだ?」
「そうねぇ……一緒にその場で戦ったりは出来ないし会話するのも極力避けたいわね。でもまぁそれ以外なら問題はないわ」
どうやら大丈夫そうだ。藍と二人で事情を話して協力出来るか聞いてみると、核が見えなくなるようにするくらいなら出来るとのこと
つまり、会っていきなり核を握り潰されるようなことはなくなったわけである。出会い頭にハイさようなら、がなくなっただけでも十分だ
「後は出来るだけ妹様の目の前に立たないことね。恐らく妹様は目の前の対象の核を潰しにくる、だから側面や背後から攻撃するのよ」
「了解。しかしまた、目に見えない分厄介なハンデが付いてしまったなぁ……十六夜さんや紅さん、それにまだ会った事ないけどレミリアさんとやらも心配だけどな……」
「今回は事が事だからな。悠哉、悪いが私が簡単にどうこう出来る問題ではないが……くれぐれも気をつけるんだぞ?」
「分かってるさ藍、俺だって死ぬつもりは毛頭無いしな。きっと大丈夫さ!」
マイナスの考えを切り上げ、次の目的地をこの館の主の自室へと決める。ひょっとしたら其処に十六夜さん達が居るかもしれない、とパチュリーが言っているからだ
「妹様が彼方此方壊しているから、マトモに機能する転移用魔法陣は……っと有ったわ。出口はレミィの部屋から少しばかり遠いけれど」
「それじゃ、早速行くか……パチュリーありがとな」
「くれぐれも妹様には注意して、場所が分かってると言っても決して気と手を抜かない事。分かったわね?」
頷き返して藍と共に魔法陣へ。視界一杯に広がる光を見ないように目を隠したりしながらも魔法陣の真ん中へ。この魔法陣で飛んでしまえば、それからは危険が一気に増すだろうが行くしかない……!
「行ってくる、パチュリーも小悪魔も気をつけてな?」
「貴方こそ気をつけて。五体満足でまた会えるのを楽しみにしているわ」
「悠哉様、どうかお気をつけてください。ご無事をお祈りしております」
──さぁ、覚悟を決めて進もう。何が有っても、諦める事なく進み続けよう




