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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第三章──能力開花──
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第二十一話

妹様、登場します

──中は薄暗く、壁に掛けられた燭台には火が灯っておらず侘しさが漂っていた。前に来た時はきちんと等間隔で配置され、灯っていたというのに……


手に汗がジットリと滲み、嫌でも全身に緊張が奔る。パチュリーや十六夜さん、それに紅さんは無事なのだろうか……


「──悠哉、一旦深呼吸しよう。身体が硬いぞ?」


「……そうだな、うん。ありがと藍」


一度、二度と深呼吸をして気分を落ち着かせて緊張をほぐす。──大丈夫、行ける


「さて悠哉、先ずは何処から向かうつもりだ? 宛が有るのなら従うが、どうするんだ?」


「そうだな……図書館へ行こうと思ってるんだ、あそこならパチュリーが居るし彼女なら何が起きたのか知ってそうだしな」


「ふむ……確かに魔女なら何かしら把握している筈。ならば善は急げ、早速──」


俺と藍が行き先を決め、いざ進もうとした瞬間──俺の視界は薄暗い天井を向いていた


何故? と考えた途端に全身に鋭い痛みが走り思わず呻き声が口から漏れ出る。緩慢とした動きで首を起こすと、藍が見知らぬ少女と組み合っていた


「ッ! 悠哉、無事か!?」


「な、なんとか……それより一体何が……?」


「話は後だ! コイツを──!?」


軽々と藍を投げ飛ばしたソレは、ゆっくりと此方を向いた。浮かぶのは赤い瞳と色とりどりの宝石のような羽


「貴方が、お姉様やパチュリーが言ってた人間かな? 初めまして! フランドール・スカーレットだよ」


言いながら近寄ってくるソイツ──フランドールからは強い血の匂いが漂う。間違いない、コイツが今回の異変の原因だ


「……ねぇ、ちゃんと聞こえてるの〜? 私とお話してよ〜」


「ッ!?」


いつの間にか目の前に居た。まだ距離が有った筈なのに、だ


言い知れぬ恐怖を感じながらも相手から目を離さないようにする。藍を投げ飛ばしたのだ、膂力もスピードも有る相手から目を離すのは危険過ぎる


「……お前は、一体何者なんだ? フランドール・スカーレット……」


「やぁっと名前で呼んで反応してくれたね! てっきり壊れちゃったのかと思ったよ〜? えっとね、私は此処の主の妹で吸血鬼なんだよ! すごいでしょ〜?」


見た目相応の笑みを浮かべて羽をパタパタと動かすフランドール。口元から覗く鋭い八重歯が、彼女が吸血鬼である事を物語っている


「ねぇ、貴方は誰なの? まだ名前を聞いてないよ〜?」


「……俺は悠哉、数藤悠哉だ。此処へは用事が有って来た」


「ふぅん、悠哉って言うんだ……用事って事はお姉様のトコに行くの? それともパチュリーのトコかな?」


小首を傾げて考え込むフランドールの後ろ──丁度死角となる真後ろで藍がゆっくりと起き上がる。打ち所が悪かったらしく、顔をしかめている


──時間が無い、急いでコイツから離れなければ──


決意を固めて懐へ手を入れる。幸いすぐに目的の物が手中に入ったので、藍にアイコンタクトで合図を送る──よし、返ってきた。いけそうだ


「……ねぇ、私の後ろの狐さんと一体何の相談をしているのかなぁ〜?」


「ぐっ!? くそ……!」


いざ発動と言う時にバレてしまい、あろうことか首を掴まれ持ち上げられる。少しずつ力を入れているのか、首がミシミシと悲鳴をあげ始める


「逃がさないよ? 貴方は私の玩具(おもちゃ)なんだから…ね?」


「……ふざ、けるなぁ……! 人を、玩具……扱いしやがってぇ……!」


札が無事なのを確認して先ず一枚目を発動させる。一枚目──つまり霊撃符を文字通り至近距離で放ち、フランドールを吹き飛ばす


「藍! 行くぞぉ!」


続いて二枚目──簡易スキマを開いて藍と一緒に中へ飛び込む。行き先は最初に決めた図書館だ


スキマが閉じて、玄関に静寂が戻る。その真ん中で霊撃符のダメージなど無かったかのように、彼女は満足そうに笑っていた


「──あははっ、あははははっ! 今度のは随分と面白い手品を使うんだ! 楽しみがいが有るなぁ……それに──」


おもむろに右手を開いて目線まで持ち上げて、ゆっくりと握り締める。ただ、それだけで──


「ドカーン」


玄関の扉が粉々に砕け散った。まるで見えない大きな力を持ったナニカに叩き壊されたように……


「待っててね、悠哉……貴方は私が必ず壊してあげるから……!」


薄暗い玄関で狂った様に笑いながら、フランドールはいつまでも佇んでいた……

如何でしょう? 妹様の狂気の一部が少しでも出ていたでしょうか?


ちなみにですが藍が投げ飛ばされたのは完全に虚を突かれたためです。普通にやりあったら大丈夫です……多分

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