第二十話
さて、紅魔館から戻ってきて早くも一月が過ぎ去った。弾幕ごっこの訓練と能力の練習に明け暮れていたのであっという間に感じる程の早さだ
能力については、紫と藍の二人の手伝いのおかげで他人に効力が現れるようにまで扱えるまでに。使うと俺が見ている光景が二人にも見えるらしい
ただこの能力にもデメリットは有る。一つは、使用者である俺から離れれば離れる程効力が薄れてしまう事。そしてもう一つは、近接攻撃──俗に言う物理攻撃には全くと言っていい程に反応しない事だった
ちなみに……この事が判明した代償に、俺は藍からしこたま殴り倒されて二日寝込んだものだ。藍のヤツ、割と本気で殴りやがって……
改めて話を続けると、身体の不調も殴り倒された怪我も治り何時ものように訓練をしようとしている時に事は起こった
「悠哉、ちょっといいかしら?」
「ん、いいけど……どうかしたのか紫」
「気になる事が出来てね……貴方の事で色々と魔女と連絡を取っていたのだけれど、最近何故か連絡がつかないのよ。スキマを開こうにもナニカに遮断でもされているのか、上手く境界を開けないし……」
「もしかしてパチュリーに何かあったのか……? 他に変わった事は有るのか?」
「──紅魔館全体の雰囲気が緊張気味ね、ひょっとすると……」
其処まで言って思案顔になる紫。いつの間に来たのか、準備万端の藍がスッと紫の後ろで待機する
どうやら何かが紅魔館に有って、その原因に紫は少なからず心当たりが有る……と。だが一体なんだ?
「悠哉、貴方……見てくる気はないかしら? 貴方も十分強くなった筈だし、この幻想郷を守る立場の私としては出来れば協力してほしいのよ。……ダメかしら?」
──一瞬、以前パチュリーに言われた道具云々の話が頭をよぎる。が……すぐに消えていった
「分かった。俺で良ければ喜んで協力するさ」
「……本当に構わないの? こう言ってはなんだけど、その……魔女から言われた事を気にしていないの?」
「道具云々だろ? ──俺は紫を、信じてるから」
お互いの間を沈黙が流れる。──唐突に藍が前に出て口を開いた
「流石だ悠哉、よく言った。紫様、私も彼に同行させてください。もし彼に何かが有っても、私が必ず守りますので」
「貴女がそんな事を言うなんてね藍……分かったわ、二人に任せる。紅魔館へ行き事の次第を確認してくること、いいわね?」
俺と藍は顔を合わせて、頷きあう。ソレを見て紫も頷いて、側にスキマを開く
「私は極力手を出さない、だから二人でなんとかすること。可能ならば現地の、紅魔館の住人の手を借りること」
──気をつけて、行ってらっしゃい──
紫の言葉に笑顔で返し、藍と共にスキマへ身を沈める。これ程までに藍が頼もしく感じるのは、俺自身が藍を信頼しているからだろうか
少しして紅魔館の門前に出ると、なるほど確かに妙な緊張感が館から漂っている。門番は──居ない
「悠哉、行くぞ」
「おう」
短く言葉を交わして館の中へ。一体何が起こっているのか……
さて、此処からどうしようかな〜
頑張りますか!




