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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第十四章──幻想郷を巡り巡った先で──
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第百九十話

お互いに挨拶を交わせた後は、道中の会話も増えた。妹紅は蓬莱人と言って所謂不老不死であり、その上色々と因縁やら何やらで自暴自棄気味な生活を送っていたんだとか。その時に大切な友人(・・・・・)が身を挺して支えてくれたおかげで、今の自分と考え方がある


彼女はそう照れ臭そうに笑って、だからこそ周りに迷惑を掛けた事や責任について俺に物申したそうだ。話を聞いていて、改めて今後の事をしっかりと考えるべきだと想いを固められたと思う


どれくらい歩いただろうか。息を切らさずに余裕を持って歩き続けてはいるが、そろそろしんどくなって来た頃──不意に妹紅が足を止めた

指差す先には、日本家屋の平屋が一軒竹林に隠れる様にして建っている。あれが永遠亭らしい


「さ、着いたよ。あれがあんたの目的地、永遠亭(えいえんてい)さ。中に入って声を掛ければ兎が出てくる、後は要件を伝えれば通してもらえる筈さ」


「ありがとう妹紅。えっと、帰りの事なんだけれど……」


「大丈夫。丁度良い頃合いになったらまた此処で待ってるから。じゃあね」


片手を挙げて妹紅はそのまま竹林に消えて行ってしまった。丁度良い頃合いって、一体どうやって知る気なのだろうか……?


兎も角、用事を済ませる為に玄関の引き戸を開けて中に入り御免下さいと声を掛ければ──バタバタと音がして誰かやって来た


「はい、ようこそ永遠亭へ。急患ですか、それとも……あら、貴方は確か……」


「こんにちは。以前此方のお薬に助けて頂いた、数藤と申します。本日はそのお礼に参りました、急で申し訳ないのですがお取り継ぎをお願い出来ますでしょうか?」


「えぇ、今日は大丈夫ですよ。どうぞこちらへ」


久しぶりに会った鈴仙に案内されて部屋へ。中には赤と青の色を対照的に配置した服装の彼女が、座って待ってくださっていた


「ご苦労様うどんげ、後は私が」


「はい師匠。では数藤さん、此方の座布団をお使いくださいね。すぐにお茶をお持ちしますので……」


お構い無くと伝え、断りを入れてから腰を下ろす。目の前の彼女が作った薬のおかげで、俺はまた命を拾ったのだ

先ずは深々と頭を下げれば、向こうも軽く会釈してくれたので口を開く


「事前連絡など取らずに来た事、先ずは申し訳ありません。改めまして、数藤悠哉と申します。貴女様のお作りになった薬のおかげで生還を果たしました故、人里での一件と併せてそのお礼に参りました」


「あらあら、これはご丁寧に……改めまして、八意永琳と申します。月の頭脳、とも呼ばれる事もしばしば……いえ失礼、今はよいですね。私が作った薬でまた命を救えたのなら、医に関わる者として嬉しく思いますわ」


挨拶もそこそこに代金を支払いたいと申し出ると、丁度良いタイミングで鈴仙がお茶を持って現れた。礼を述べて受け取ると、八意先生が彼女に何か耳打ちする。何度か頷くと、一礼して彼女は退室して行った


代金は彼女が請求書を持ってくるので待っててほしい。そう言われたので大人しく待っていると、八意先生がいつの間にか紙とペンを手にしていた。俺が服用した薬の効果と副作用について聞きたいらしい


霊夢達から聞いた内容を、記憶を頼りに話していく。朧げではあるがそれでも構わないと仰るので、覚えている事は全て話してあげると満足げに頷きながら改良やら何やら呟いていた


「お待たせ致しました数藤さん。此方が請求書となります」


持って来てくれた請求書。その金額は高くもなく低くもない、命の対価としては非常に安めの値段にも思えた。少し心配になったので尋ねてみると、あの薬はまだ試験運用段階で副作用等がはっきりとしていなかったらしい


回復すると断言出来るが副作用は分からない、そんな薬だった。聞かされてドキリとしたが、幸い目立った所にも目立たない所にも何ともなかったので内心ホッとしたが……まさかそんな薬が使われていたとは


八意先生は薬の改良を始めるとかで此処で退室されることになり、改めてお礼を告げてうさ耳女性が玄関まで再度案内してくれることに

時間を作れたらまた、一客人として寄っても大丈夫だろうかと尋ねると彼女は笑顔で承諾してくれた。また一つ楽しみが出来た、なんて思っていたら──


「私に挨拶もしないだなんて、随分な人ね貴方」


玄関を見覚えのない女性が封鎖していた──

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