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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第十四章──幻想郷を巡り巡った先で──
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第百八十九話

今まで色んな服装の人物達に出会って来たわけだが、これまた違う服装の人物が竹藪を掻き分けてやって来た。白い半袖のカッターシャツにもんぺ(・・・)だったかを履き、サスペンダーを通して肩に掛けている。幾分破れているようだが、当人なりのファッションなのか……?


「なんだ、魔理沙じゃないか。私を呼ぶってことは……あぁやっぱり、そっちの兄さんの案内かい?」


「おう、そうだぜ。お前いつも暇だろ? 今回も頼むな!」


いきなり失礼な事を言い出してケラケラ笑う魔理沙に、はぁ……と肩をすくめる彼女。気を取り直したようで、ジッと俺を見つめてきたから目を合わせれば、ふーんと何やら頷いている


「何処かで見た覚えのある顔だと思ったら……兄さん、ひょっとして悠哉とか言う阿呆(・・)だろ?」


いきなりの罵倒、眉をひそめる俺とびっくり顔の魔理沙。構わず彼女は続ける


「言われて当然だろう、寧ろ周りは何も言わなかったのか? あの(・・)八雲紫にケンカ売って這う這うの体で逃げ出して、さらに厄介先に文字通り厄介事を運んできたって。私なら蹴り出してるよ、そんなヤツ」


「おいおい妹紅、その辺で良いだろう。な、頼むよ。永遠亭までさ、お礼を言いに行くだけなんだ。往復で案内してやってくれよ」


「……ふん。まぁいいさ、それくらいならね。でも妙な真似したら──灰にしてあげるよ」


突如彼女の両腕が燃え上がり、そのあまりの熱量に顔を背けて距離を取る。ちらと見れば魔理沙も帽子で顔を隠して下がっていた

やがて熱が引き視線を戻せば、ポケットに両手を突っ込んだ彼女があごでついて来いと合図していた


「……ここまで言うヤツじゃなかったんだけれどなぁ。悪いヤツじゃないんだ、きっと虫の居所が悪かっただけさ」


魔理沙に礼を言って見送り、改めて彼女について行くことに。なかなか厳しい言葉だったし初対面の相手に言われてムッとした部分もあるが、側から見ればその通りなのだから相手に反論は出来ない

ただ静かに、俺は後について竹林へ足を踏み入れた……






しばらくはお互いに無言で進み続けた、時折突き出した根っこを指差して注意をしてくれる以外は。そして、彼女が休憩を提案してきたので手頃な根っこに腰を下ろして休むことに


遠くで鳥の鳴き声が聞こえるだけの静寂の中、彼女が口を開いた


「あんた、なにも言い返してこないんだな。てっきり怒ってくると思ったんだけれど」


「怒っているさ。初対面の相手に言われたんだから、なおさらな。でも……あんたの言う通りだとも思った。だから、言い返さないんじゃなく言い返せないんだ」


ふぅん……とまたジッと俺を見つめてくる、妹紅とやら。少しして、彼女はゆっくりと頭を下げた


「悪かったよ。新聞であんたの事を読んでさ、よくもまぁ平然としているヤツなんだと思ってたんだ。どんなヤツかと思ってたら、まさか目の前に現れるとはね。私はてっきり無責任な野郎だとばかり」


──冷静になって考えれば。第三者の視点で俺の歩んだ道を振り返れば。彼女の言う通り、俺は自分勝手な野郎だ。まだきちんと、感謝の言葉も謝罪の言葉も伝えきれていないのだから


厄介事を持ち込んでくる厄介者。そう妹紅には映った。そんな俺を、レミリア達は迎え入れてくれて、幽々子達はもう一度受け入れてくれた。霊夢も、萃香も、魔理沙も……他にもたくさんの人達が、こんな俺を支えてくれた


「……決着をつけたら、世話になった人達の所へ一つずつ周って言葉を尽くすつもりだよ。感謝も、謝罪も、届かないかもしれないけれど。それが俺なりの責任の取り方だと考えているんだ」


「…………そうかい。その言葉、覚えておくよ。私は永生き(・・・)だからね、反故にしたら焼きに行くさ」


初めて彼女が笑みを浮かべた。そのままに片手を差し出して、こう続けた


「蓬莱の人の形こと、藤原妹紅(ふじわらのもこう)さ。宜しくな兄さん」


「こちらこそ、厄介になる。よろしく頼む」

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