第百七十八話
単純に四対一の弾幕戦。飛んで跳ねて走り回って──フランとの弾幕ごっこという名のダンスを、互いに笑みを浮かべて踊る
「楽しいね悠哉! やっぱり弾幕ごっこはこうでなくっちゃね! 悠哉も笑って遊ばないと、この先行き詰まって苦しくなっちゃうよー?」
四人のフランがあちこちから笑い声と共に弾幕の雨を降らせてくる。能力を余す事なく使い無我夢中で飛び回り、時にはグレイズの冷や冷やした感覚を味わう
段々と辛くなってきている筈なのだが、それでも俺は笑顔を止められなかった。本当に──本当に久しぶりに心から楽しめている、もっとこの時間をフランと楽しみたいと思っているからだ
「あぁ、やっぱり弾幕ごっこって楽しいなフラン! すっかり忘れてしまってたけれど、この試練のおかげだな……」
「良かった! でも、だからと言って油断してると危ないよー? えいっ!」
時計回りに放たれていた大玉弾達が今度は反時計回りに流れが変わり、更に左右からレーザー弾と通常弾が加わる。徐々に逃げ道を削られ、気づいた時には弾幕に取り囲まれてしまっていた
「ふっふーん! 私も成長してるんだよ! さぁ──あなたがコンティニュー出来ないのさ!」
ゆっくりと狭まる空間。このままでは間違いなく弾幕によって圧殺されてしまうだろう──このまま何もしないなら
けれど、フランは俺がこの状況を打開出来ると信じているようで。笑みを浮かべたまま追撃もせず、ただ待ってくれている。それに応えるためにも、俺は深呼吸を一つして能力を発動させる
「落ち着いて……落ち着いて……そこだっ!」
ほんの一瞬、弾幕が揺らいで出来た隙間に身体を滑り込ませる。ギリギリのタイミングだったのか両側からグレイズ音が響く、だがしっかりと潜り抜けに成功していた
「──あーあ、抜けられちゃった。結構自信あったんだけれどなぁ……おめでとう、悠哉!」
フランとの試練は最後まで、お互い笑顔で幕を閉じた……




