第百七十七話
「それじゃあ先ずは小手調べ! さぁ悠哉、私と楽しく踊りましょう!」
フランの背後に複数の魔法陣が浮かび上がり、それぞれ大玉や分裂する小玉といった通常弾幕が俺に向かって降り注ぐ
攻撃の類を一切使用出来ない為ステップを踏んで飛び跳ねて、空中を滑るようにしてただひたすらに躱し続ける。それを見て、フランはさらに弾幕の密度を上げていく
──それはまるで、弾幕ごっこの最中に行われる俺とフランのダンスだ。放たれる弾幕は俺達を際立たせて流れて行き、大小様々な光を放って美しく消えていく
「あはははは! 流石悠哉、この程度は余裕だね! 私、とっても楽しいよ!」
「そうか、俺もだよ……っと。コントロールも以前よりさらに精密になってるし、気が抜けないね」
軽口を叩く程度には周りが見える。自分の実力が彼女に負けないくらいには付いてきた証だろうか、なんて考えていたらフランの手にはスペルカードが
「なら、これはどうかな? 単純だけど、効果的! さぁおいで、遊びましょう!」
直後、カードが光り輝きフランの左右に人影が。その人影はやがて立体的な形を取り、フランそっくりになって現れた
「確かに効果的だなこれは……四対一か。だけど、俺も負けられないからな。かかってこい、フランドール!」
にっこりと、ケタケタと、にやりと、ゲラゲラと、それぞれ異なる笑みを浮かべて──四倍の密度になった弾幕が空間一帯を覆い尽くす。ぱっと見では抜け道など無く文字通り壁となって向かってくるような、そんな錯覚すら起こさせる
だがこれはあくまで弾幕ごっこ、ならば必ず何処かに道は有る。被弾してしまう前に見つけ出し潜り抜けなければ……
能力を発動して手早く道を進むと、先程よりも一回り大きな弾でもって壁が形成される。抜け道はさらに小さく、そして見つけづらくなっていく
だが、俺は自然に笑みが溢れるのを抑えられなかった。楽しい、ただただ楽しいのだ。弾幕ごっこが楽しい、フランと遊ぶのが楽しい
「ふふっ、悠哉やっと笑ったね。弾幕ごっこは楽しいモノなんでしょう? なら思いっきり、楽しもうね!」
俺達は笑い合いながら、これが試験であるという事を忘れて弾幕ごっこに興じた。この気持ちを忘れなければきっと辿り着ける、そんな手応えすら覚えながら……




