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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第十四章──幻想郷を巡り巡った先で──
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第百七十二話

「先ずは私からです。私との特訓で悠哉さんも持久力や筋力が、前にも増して付いた筈。ですのでここは一つシンプルに、腕立て伏せで回数を叩き出して頂きます。ただそれだけではなんの面白味も有りません。なので……私と勝負という形を取らせて頂きますね」


一番最初に口を開いたのは美鈴だ。腕立て伏せ、確かに彼女に教えてもらった──或いは共に励んだ中ではかなりツラい部類の内容だ。たかが腕立て伏せ、されど腕立て伏せ。ぶっちゃけると……俺は過去に一度も美鈴に回数時間共に勝てた事などない


不安を隠せない俺に、美鈴は笑みを浮かべ──頰を平手打ちしてきた。咄嗟の事に反応出来ず飛ばされて起き上がる頃には、美鈴の顔は間近に有った。何も言わない、だけれど言いたい事は嫌と言う程その瞳から伝わってた


──いつまで甘えているのだ、逃げ腰は止めてかかって来い。言葉にこそしなかったが、その意思は理解出来た


「…………レミリア、合図を頼む」


「……分かったわ、美鈴も準備出来ているようだし早速始めましょう。──用意」


レミリアの口から開始の合図が告げられると同時に、俺と美鈴は無言でひたすら腕立て伏せをし続ける。絵面は非常に地味だろう、だがそのツラさは尋常じゃあない。咲夜が静かな声で早くも十分を宣言する中、美鈴は顔色一つ変えず寧ろスピードを上げていく。俺も離されまいと必死に追い縋る


「──ッ!?」


右腕に鈍い痛み。かなりのスピードでやっているとはいえ、早過ぎる。自身の肉体の脆弱さに早くも心が揺れるが、弱音は吐けない。何より自分の勝手で出て行こうとしているのだ、この程度で音を上げてどうする……!?


歯を食いしばり、恥も外聞も捨てて──ただひたすらに勝つ事だけを考えて、腕を動かし続ける。美鈴もソレを見て、倍速になったのではないかと思う程に加速する。弱気な心が鎌首をもたげ、無理だなんだと話しかけてくる。今までの俺なら間違いなくここで誘惑に負けていただろう、だがもう今までとは違う!


「──う、うおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」


大きく雄叫びを上げて、一気にスパートをかける。腕があまりのツラさにさらに悲鳴をあげ、足も先ほどよりも尚重く感じられる。美鈴に勝たなければ意味は無い、その現実だけが俺を突き動かす


……まだだ、まだ俺はいけ──


「はい、ストップ」


パチュリーの声がやけにすんなり耳に入ってきた、そう思った途端身体がぴたりと動くのを止めた。いきなり過ぎる出来事に目をパチクリさせる俺と美鈴に、咲夜が落ち着き払った様子で一言


「回数達成につき、終了ですわ。お二人とも先ずは、お疲れ様です」


「お……終わり……?」


「はい、終わりです。勝負はお嬢様から発表して頂きます、ではお願い致します」


ピンと来ない、呆気ない終わり方ではあるがそれよりも結果だ。受験の合否発表を待つ受験生のように、俺は祈る気持ちでレミリアを見つめた


「……及第点ね。一先ずはおめでとうと言わせてもらうわ悠哉。でもそもそも勝負なんて必要無かったのに、わざわざ貴方を焚きつけるために美鈴も味な真似をしたわね」


焚きつけるため……? 美鈴に視線を送ると、小さくごめんなさいねと返ってきた。先の平手打ちから、俺は美鈴に操られていたという事なのだろうか……だがそのおかげで及第点は貰えたわけだ。ここは美鈴に感謝しておかなければな


「次は……パチェね。楽しみだわ」


──黙ったままのパチュリーは、ただただ笑うだけだった……

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