第十六話
「行ってきます!」
見送る紫と藍にそう言って、開かれたスキマを潜る。見慣れた八雲邸から、見慣れない真っ赤な館の前に俺は立っていた
紅魔館──名の通り、何処も彼処も真っ赤っか。門や壁も赤く装飾が施され、正直見るのが躊躇われる。目に悪すぎるのだ
「……これ絶対警戒色だろ。どう考えても入るな危険ってヤツだろ……此処に入れと言うのか紫は……」
ため息を一つ来て早々に吐き出しながら、先ずは門へと向かう。門番の一人や二人、きっと居る筈──
「お、あの人かな? ──すみません、少しよろしいでしょうか?」
声をかけたのは、見た目が中華っぽい服装の長身の女性。腰までありそうな赤髪を紐で括り、俺に気づくとスッと目を細める
「はい、何か紅魔館に御用ですか?」
「えっと……妖怪の賢者からの紹介で参りました、数藤悠哉です。こちらの図書館に住まわれている方に能力を見てもらうように言われて来ました」
「あぁ、貴方がそうでしたか……この紅魔館で門番と花畑管理の庭師をしてます、紅美鈴と申します」
差し出された手に握手で返し、此処で待つように言われたので待つ事──数秒
殆ど待った気がしないうちに、今度はメイド服姿の女性が何処からともなく現れた。二言三言会話を交わして此方に向き直る
「初めまして、紅魔館でメイド長を担当しております十六夜咲夜と申します。数藤悠哉様でございますね? ようこそ、遠路遥々紅魔館へ!」
両手を高々と広げて歓迎の意を表するメイド長こと十六夜さん。誇らしげなその表情から察するに、彼女の主は仕えるに値する素晴らしい人物なのだろう
圧倒される俺を見てクスリと笑みを零し、恭しく一礼。次いで、一言
「では御案内致しますわ。くれぐれもはぐれぬよう、しっかり付いてきて下さいませ」
「あ、はい。では紅さん、ありがとうございました」
頭を下げる俺に、いえいえと手を振って謙遜する紅さん。一足先に玄関で待っていた十六夜さんの元へ急いで向かう
「すいません、待たせてしまって……」
「お気になさらず、御客様をお待ちするのも当然ですわ。ささ、参りましょうか?」
「はい、よろしくお願いします」
中もまた凄かった。赤紅緋朱──色んなアカが床や壁天井を彩っている。そのせいで何処を見ても目が痛くなってくる
慣れない俺にすぐ慣れますわと一言かけて一定のペースで進み続ける十六夜さん。姿勢が全くブレない歩き方でかつ俺の体力に配慮するように時折スピードを緩めてくれる
凄い人なんだな、と内心で感心しつつ付いて行くと何やら古ぼけた大きな扉が目に飛び込んできた。十六夜さんの足が止まったので、恐らく此処が目的地の図書館なのだろう
「はい、お待たせ致しました。此方が悠哉様の本日の目的地である紅魔館の図書館になります」
「案内ありがとうございました。道中も色々と配慮してもらって……感謝します」
「いえいえ……では、私めはこれにて失礼させて頂きます。何かお困りになられましたならば、私めの名前をお呼びくださいませ。すぐに駆けつけますので……」
そう言い残し、彼女は文字通り俺の目の前から消えた。まるで始めから居なかったかの様に……
「……さて、行くか!」
意を決して、俺は大きな扉を思いっきり押し開いた──
咲夜さん、瀟酒過ぎるかな
原作だと割と天然入ってるけど、何処でそれを出そうかな……




