第百五十八話
妖夢がズタズタになった文を引きずって戻るのと他の連中が起き出すのがだいたい同じだったので、早速朝食作りとしゃれこんだ
とは言っても、妖夢のおかげで然程時間は掛からず程なくして出来上がっていたのだが……そうそう彼女が文に朝食抜きと言い出した時は可哀想なので却下とさせて頂いた
「すみませんゆーさん……助かりましたぁ。さしもの私も、ご飯抜きというのは辛いですからねぇ」
「そう思うのならあまり怒らせるなよ……ズタボロで引きずられて戻ってきた時は心底びっくりしたんだからな? まぁ妖夢もその辺りは加減してくれたみたいだし、ブン屋なのは分かるがもう少しソフトにやれよ全く」
「あやややや、ですがね? そのネタのためならば命を掛けるのも厭わないのですよ、それが真のブン屋──」
「あら、まだ足りませんでしたか文さん?」
「いいいいえ、滅相もないですはい。自重致しますです、はい」
「完全に心折られてるじゃねぇかよお前……」
とまぁこんな感じが朝食の風景だ。小町のヤツがコレを見て笑い過ぎて霊夢と魔理沙の器を転がしてしまい、二人の反感を買って追いかけ回されたりもしてたがこれはまぁ小町が悪いしスルーさせてもらった
お代わりを貰って皆で一頻り食った後、またぼちぼち散策しに山道を登って行く。昨日かなり取れたので今日は土産用にもう少しだけ、果物を探す予定だ
昨日とはまた違う景色を見せてくれる山をゆっくりとした足取りで進むと、後ろから小町が追いついてきた。霊夢と魔理沙は……上手く撒かれたらしい
「いやぁ参った参った、たまんないねぇありゃあ。まさかあそこまで追ってくるとは思いもしなかったよ」
「元を正せば小町の責任だろう? 特に霊夢の前で彼女の飯をひっくり返せば、どうなるかくらい簡単に予想がつきそうだが」
「あはは、まぁねぇ。それよりさ、ご一緒してもいいかい? あたい、そこそこ取っちまったから誰かと周りたくてねぇ」
「俺で良ければ構わんぞ。どうせ一人だったし……っと見っけ、コレ持って帰るか」
籠に入れながらのんびりと小町と共に山を巡る。これで酒が有れば……なんて言ってる小町に呆れ笑いが出るも、並んで歩けば確かに風情が有る
俺は酒は飲めないが、もし飲めたのなら小町と同じ感想を抱いたのかもしれないな……
そんなこんなで山を歩き回り戻ってきた頃にはすっかりお昼頃になっていた。丁度皆戻りはじめていたのか不思議とすぐに集まったため、霊夢と魔理沙と小町の三人がお昼を作り始める
そんな中──妖夢から軽く修行の相手をしてほしいと頼まれた。飯までまだ時間は有るし、俺としても来るべき戦いに備えて強くなっておきたい所。喜んで誘いを受け、少し先に有る開けた場所へ向かう
「あや? ゆーさんではありませんか、あぁなぁるほどぉ。私は此処で新聞に使えそうな一瞬を探させて頂きますので、お二方共に無理しないよう……」
文がカメラを構えるのと同時に、俺と妖夢は互いの相棒を構える。文が風で舞い上がらせた木の葉がふわりふわりと俺達の中間へ落ちる──直後、俺達は刀を交わらせていた
「行きますよ、悠哉さん!」
「行くぜ、妖夢!」
実戦形式での試合、開始──




