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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第十二章──妖怪の山で恩返し──
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第百五十七話

酒宴もキリの良い所で切り上げ、天狗の用意してくれた寝床で一夜を明かして昇る朝日と共に起床する


文達は同性というのもあって同じ所で寝泊まりしたらしく、一人きりで寝るのには当てがわれた寝床はとても広く感じた


「ふわぁ……さてと、軽く体操でもして身体を解すとしましょうかねぇ。そうすりゃ誰かしら起きてくるだろうし」


ストレッチをしながら空を見上げると、まだ太陽は昇りきっておらず辺りは少し暗い。だが、気配は感じる。誰かが起きたのか見張りの天狗がやって来たのか、はたまた……


念のため相棒を寝床から持って来て腰に差し、ストレッチを続けながら油断無く意識を傾けていると現れたのは妖夢だった。彼女も自身の得物である長刀楼観剣を背負い短刀白楼剣を腰に差して、軽く伸びをしていた


「ふわぁ……お仕事が無い分朝がラクです。ずっとこのままなら……いやいや、それでは幽々子様にお仕えする事を放棄するも同意。それでどうするのよ魂魄妖夢、寝ぼけているのなら早く目を──」


ここでようやく、妖夢が此方に気づく。取り敢えず気まずいながらも手を挙げて挨拶をすると、顔を真っ赤にして走り寄って来た


「ああああのですね悠哉さん! さささ先程のは独り言でしてね! けけけ決して嫌気が差したとかではなくてですね!」


「わぁったわぁった、幽々子には黙っててやるよ。ってか言うつもりなんざハナから無い無い少しは落ち着け。ホレ深呼吸、な?」


「は、はい…………すみませんお見苦しい所を。ただほんのちょっとだけ、日々の責務から解放されたいなーと……絶対に幽々子様には内緒ですからね?」


「おう、約束だ。にしても、妖夢は相変わらずの早起きか……庭師という職業も、なかなかに大変なんだな。オマケに幽々子の事も有るし、心休まる時なんか有るのか?」


「えぇもちろん。お風呂の時とか寝る時とか、後は幽々子様とのんびりお茶を楽しむ時ですね。こうやって、貴方と会話をするのもですが……」


「ん? なんだ、そうだったのか。変に勘違いするぞ〜そんな物言いだと。私は貴方に気が有りますって風にも取れるし」


からかい気味に言ってやると、またしても顔を赤らめあたふたする妖夢を見て笑っていると……パシャリとこの空間に似つかわしくない音が一つ。固まった妖夢はさておき音のする方向を見れば、してやったりな顔の文が


寝癖がそのままな所を見るに、チャンスと見てなり振り構わずにカメラを引っ掴んで飛んできた──って所だろうか


「…………ご馳走様ですお二方。人気の無い朝方、逢瀬を楽しまれていたとは……どうぞ、ごゆっくり(・・・・・)


見ていると無性に腹立たしくなる笑みを顔いっぱいに張り付けて飛び立つ文を、呆然と眺める妖夢。流石に可哀想なので撃ち落とすか──なんて考えていると、何やらプチンと隣から色んな意味で危ない音が


「……ふっふっふ、ふふふふふ、あははははっ! あーっはっはっはっはっは!」


「お、おい妖夢……? 大丈夫、じゃなさそうだが一体どうした……?」


「いえなに急用が出来ました。今朝の朝食の献立もたった今(・・・・)考えつきましたし、私はしばらく留守にさせて頂きます」


凄惨な笑みで俺を見る妖夢に、思わず何時ぞやの出来事が頭を過る。違うのは、相手が俺じゃなくて文な所か……


無言で文までの道を能力を使って教えてやると、さらに笑みを深めた妖夢が鼻歌交じりに飛び出して行く。すまん文……そう心の中で思いつつ静かに合掌しておく


──やや間を置いて、文の悲鳴が山全体に響き渡ったのは最早言うまでもない事だろう……

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